セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-7:

アナログ多剤耐性例に対する治療戦略

演者 小関 至(札幌厚生病院・3消化器科(肝臓科))
共同演者 狩野 吉康(札幌厚生病院・3消化器科(肝臓科)), 豊田 成司(札幌厚生病院・3消化器科(肝臓科))
抄録 【目的】当院における核酸アナログ (NA) 多剤耐性例の出現頻度を調査し, 多剤耐性出現後の治療内容および効果について検討した.【対象と方法】NA1年以上継続投与可能であった466例を対象とした. 内訳ではEntecavir (ETV) 初回投与207例, Lamivudine (LAM) 耐性に対するETV投与15例, LAM耐性に対するAdefovir (ADV) 併用127例, LAM投与後にウイルスコントロール良好にてETVへswitchした症例が107例. LAM単独投与10例. 観察期間中の2剤および3剤耐性の頻度を調査した. また, これら多剤耐性出現例をLAM耐性出現時まで遡り, 当時の保存血清からLAM以外のADV, ETV耐性の検出を試みた. 次にこれら多剤耐性例に対するLAM+ADVおよびADV+ETV療法の成績を示した. NA耐性の検出はINNO-LiPA法を用いた. 【成績】1) LAMとETVに対する2剤耐性はTotal466例中14例 (3.0%) , LAMとADVに対する2剤耐性は6例 (1.3%), 3剤耐性は1例 (0.2%)で認められた. 治療内容別には i) LAM耐性に対するETV投与15例中8例 (53.3%) でLAMとETVに対する2剤耐性 ii) LAM耐性に対するADV併用127例中3例 (2.4%)でLAMとETVに対する2剤耐性, 5例 (3.9%) でLAMとADVに対する2剤耐性, 1例 (0.8%) で3剤耐性 iii) LAM投与後ETVへswitchした107例中2例 (1.9%) でLAMとETVに対する2剤耐性 iv) ETV初回投与207例中1例 (0.5%) でLAMとETVに対する2剤耐性が出現した. 2)LAM耐性出現の時点でETV耐性出現が4例, ADV耐性出現が2例で認められた. 3)i)LAM+ADV療法は7例に行われ, 観察期間中央値56ヶ月の経過で1例がHBV DNA2.1未満を, 残る6例はHBV DNA陽性を示した.ii) ADV+ETV療法は12例に行われ, 観察期間中央値24ヶ月の経過で8例がHBV DNA2.1未満あるいは陰性を示した. 【結論】多剤耐性は466例中19例(4.1%)で出現した. LAM耐性出現の時点で既に多剤耐性を獲得した症例が6例存在した. 多剤耐性例に対するADV+ETV療法併用療法では約7割の症例でHBV DNAの制御が可能であるが、一方でウイルス制御が困難である症例が存在し、これらの症例に対してはTenofovirの臨床応用が望まれる.
索引用語 多剤耐性, B型肝炎ウイルス