セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-9追5:

B型肝炎に対する拡散アナログ投与例の長期予後

演者 多田 俊史(大垣市民病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】本邦でB型肝炎に対する核酸アナログ製剤(NA)の使用が認可され10年を経過した。その間、NAの使用によりB型肝炎の予後は著しく改善した。今回は当院でのNA長期投与例について検討した。【対象および方法】対象は3年以上経過観察したB型肝炎785例(NA投与例は投与開始から3年以上投与、肝発癌例は経過観察開始1年以後もしくはNA投与開始後1年以後)のうち、年齢、性、Child-Pugh分類、HBe抗原、HBVDNA、ALT、血小板をpropensity scoreでマッチさせたNA投与例117例と、NA非投与例117例である。これら2群の臨床経過について肝機能の変化、発癌、変異の点から検討した。臨床検査値については積分平均値を求めて検討した。なお、ラミブジン単独投与18例、ラミブジン+アデフォビル併用投与28例、エンテカビル投与71例(エンテカビル単独投与30例、ラミブジン投与からの変更41例)であった。【成績】NA投与群は非投与群に比してALT(P<0.0001)、γGTP(P=0.0428)、ALP(P=0.0127)、AFP(P<0.0001)、HBVDNA(P<0.0001)は有意に減少し、血小板(P=0.0060)、ALB(P<0.0001)は有意に上昇した。一方、NA投与群とNA非投与群での発癌率は5年、10年でそれぞれ6.1%と11.4%、12.1%と42.9%であり、NA投与群ではハザード比0.419(0.182-0.964、P=0.041)と発癌率は有意に低率であった。また、NA使用群でHBcrAgが3.0logU/mL以下の群と3.0logU/mL超の群を比較すると前者が発癌率の高い傾向を認めた(P=0.082)。【結論】NAの変更、追加によりNA投与例での長期おける肝機能のコントロールは良好であった。また、NA投与群は非投与群に比し発癌率に関しても約半数に抑制し、HBcrAgがその予測に有用である可能性が示された。
索引用語 B型肝炎, 拡散アナログ製剤