セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-11:

B型慢性肝炎核酸アナログ薬治療における中止基準についての検討

演者 松本 晶博(信州大・消化器内科)
共同演者 吉澤 要(信州大・消化器内科), 田中 榮司(信州大・消化器内科)
抄録 【目的】B型慢性肝炎に対する核酸アナログ薬治療では、中止後の再燃の問題により、安易な中止はできない。今回、核酸アナログ薬中止例を解析し、より効率的な中止の可能性について検討した。【方法】多施設共同研における、B型慢性肝炎の核酸アナログ薬中止例126例(男性83例)を対象とした。治療中止時の年齢中央値46歳(20-79)、治療期間中央値1.3年(0.3-7.8)であった。再治療率は57%で、治療中止継続期間の中央値は0.5年(0.1-10.2)であった。【結果】ROC解析により、治療中止後の平均ALT≦30かつ平均HBV DNA≦4.0 LC/mlに対応する最大ALT≦79かつ最大HBV DNA≦5.7を求め、これらの最大値を満たす症例を非再燃群、それ以外を再燃群とした。中止時のHBV DNA>3.0または中止時HBeAg陽性の41例では再燃率が90%以上であり、これらを除く85例について検討した。再燃群と非再燃群間で有意差がみられたのは、治療期間 1.6 vs 6.0年、P=0.006、中止時HBcrAg量 4.3 vs 3.4 LU/ml、P=0.003、治療開始時HBsAg量 3.3 vs 2.7 LIU/ml、中止時HBsAg量 3.1 vs 2.0、P=0.001であった。HBV DNA量(TaqMan法)は有意ではなかった。多変量解析による再燃に関連する因子(OR, 95%CI, P) は、治療期間≧1.3年(0.5, 0.3-0.9, 0.027)、中止時HBcrAg量≧4.0(2.2, 1.3-3.9, 0.006)、中止時HBsAg量≧1.9(5.2, 1.9-14.5.0, 0.002)であった。中止時HBcrAg量のcut offを3.0および4.0、HBsAg量のcut offを1.9および2.9として各3群に分け、低値より0、1、2点とscoringし、HBcrAgとHBsAgの合計が0点をI群、1-2点をII群および3-4点をIII群とし、各群の中止後5年時点での非再発中止継続率を求めると、それぞれ、88、50および12%であった(P<0.001)。【考察】B型慢性肝炎の核酸アナログ薬治療において治療中止を考慮する場合、HBe抗原陰性、HBV DNA<3.0 LC/mlは必要条件であった。また、少なくとも1年以上の治療期間が必要であり、中止時のHBcrAg量とHBsAg量から設定したスコアは中止後の肝炎再燃率を予測するのに有用な指標と考えられた。
索引用語 HBs抗原, HBコア関連抗原