セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-12:

HBeAg陽性B型慢性肝炎に対するIFN sequential療法中のHBcrAg、HBsAgの変化と核酸誘導体中止の可能性

演者 榎本 大(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
共同演者 西口 修平(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
抄録 【背景】我々は、核酸誘導体(NUC)によるHBV DNA低下が良好な症例では、IFN sequential療法によりNUCの中止を達成しうることを報告してきた。本邦では、NUC中止の基準としてHBコア関連抗原(HBcrAg)の有用性が報告されている。海外では、PEG-IFNによるHBsAgの低下が良好であると報告されている。【方法】対象はHBeAg陽性B型慢性肝炎44例(男性41例、38±10歳、genotype C 39例、HBV DNA 7.6±0.9 logコピー/mL)。2006年以前の28例にはラミブジン(LAM)を6ヶ月、それ以降の16例にはエンテカビル(ETV)を12ヶ月投与の後、1ヶ月IFNを併用して中止し、その後IFNを5ヶ月単独投与した。治療効果については、投与終了6ヶ月のALT正常化、HBeAg陰性化、HBV DNA<104コピー/mLをもって著効とした。【成績】1)LAM群の9/28(32%)、ETV群の3/16(19%)に著効が得られた。NUC中止後の急性増悪を6例(14%)に認めたが、黄疸や肝不全は見られなかった。2)治療前のHBcrAgは7.3±1.2 log U/mL、HBsAgは3.7±0.6 log U/mLであり、両者は有意に相関した(p=0.012, r=0.418)。IFN開始時、IFN終了時、治療終了3~12カ月のHBcrAg/HBsAgの変化(log U/mL)は-1.2/-0.11、-0.9/-0.02、-0.3/+0.09であった。3)著効12例は33±9歳と有意に若く(p=0.018)、NUC投与中のHBeAg陰性化率が7/12(58%)と有意に高く(p=0.031)、IFN開始時のHBV DNAが2.7±0.5 logコピー/mLと低い傾向を認め(p=0.093)、治療終了3~12カ月のHBcrAgの低下が-1.7 log U/mLと有意に良好であった(p=0.0006)。【結論】1)Sequential療法により12/44(27%)に著効が得られた。2)Sequential療法中、HBcrAgの低下に比してHBsAgの低下は軽微であった。3)若年でNUCによるウイルス学的効果の良い症例では、sequential療法により長期の寛解も期待出来る。著効例では結果としてHBcrAgの低下が得られたが、効果予測因子としてのHBcrAgやHBsAgの有用性は示されなかった。(共同研究者:神戸朝日病院、金守良先生)
索引用語 B型肝炎, sequential療法