セッション情報 |
シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
進行肝癌に対する治療戦略
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タイトル |
肝S4-1:高度脈管侵襲(Vp3/4・Vv3)併存進行肝細胞癌に対するTACE併用肝切除の意義と限界
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演者 |
吉留 博之(千葉大大学院・臓器制御外科学) |
共同演者 |
竹内 男(千葉大大学院・臓器制御外科学), 宮崎 勝(千葉大大学院・臓器制御外科学) |
抄録 |
【目的】高度脈管侵襲(Vp3/4・Vv3)併存肝細胞癌(HCC)は予後不良であるが、肝切除により予後が期待できる症例も存在する。当科では術前肝動脈注入化学塞栓療法(TACE)を併施し肝切除を施行してきた。その意義と限界について明確にする。【方法】2009年までに当科で641例のHCC症例の中で、84例がVp3/4・Vv3併存HCCであり、34例に肝切除(Hx群)を施行し、50例に対してTACE/TAIのみ行った。患者背景・手術術式・予後について検討した。【結果】Hx群の5生率は20%(95%CI: 0.074-0.352)、TACE群2%(95%CI: 0.0016-0.046)と有意にHx群が良好であった。残肝容量・肝予備能より手術適応を決定し、3亜区域以上の系統的肝切除を25例に施行した。術前TACEを15例に対して施行し、取り扱い規約上のtherapeutic effect (TE)3を6例に認めた。手術時間中央値は355分、出血量中央値1983 mlであった。術後合併症は44%に認められ、在院死を1例(2.9%)に認めた。また最長は18年10ヶ月の無再発生存例を認めた。単変量解析では術前TACEの効果、腫瘍径10 cm、出血量、切除断端が規定因子となり、多変量解析で腫瘍径10 cm (HR: 2.78, 95%CI: 1.16-6.64)と術前TACEの効果(HR: 4.65, 95%CI: 1.39-15.5)と出血量が独立した予後規定因子であった。多変量で有意であった2因子を用いたsubgroup解析にて予後を検討すると、腫瘍径が10 cmを超える症例では、術前TACEの効果がTE2以下の場合には手術適応外と考えられた。【結論】高度脈管侵襲を伴うHCCは術前TACEの効果を考慮しながら症例を選択すれば、長期生存が期待できる症例が存在すると考えられた。効果が不良の場合にはsorefenibなどの他の術前治療が奏功した症例で切除を考慮することが望ましいと考えられた。(JACS in press) |
索引用語 |
肝切除, 腫瘍栓 |