セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 消S4-2:

肉眼的脈管侵襲を有する肝細胞癌に対する治療戦略

演者 井上 陽介(東京大・肝胆膵外科)
共同演者 長谷川 潔(東京大・肝胆膵外科), 國土 典宏(東京大・肝胆膵外科)
抄録 【背景・目的】肉眼的脈管侵襲を有する肝細胞癌(TT-HCC)は予後不良である。肉眼的根治切除により、ある程度長期生存を得られるが、再発率は非常に高率であり、残肝遺残や肝外病変といった非治癒因子も多い。当科におけるTT-HCCの治療戦略につき報告する。【対象・方法】1994-2008年、当科で切除された790例の初発HCCのうち、TT-HCC77例を対象とした。TT症例は原則全例に術前TACEを施行している。術式は、TTを伴わないHCCの切除に準じて決定し、肝予備能が許せばEnblocな切除を第一選択とし、Vp4症例やTTが領域枝を越えて伸び出す症例では、TTを露出摘除する手法(Peeling off法)を用いている。肉眼的遺残のない切除ができた場合(治癒切除群n=69)は通常の経過観察、残肝遺残がみられる場合(非治癒切除群n=8)は、術後残肝TACEを追加している。新たな試みとして、TT-HCC切除後にソラフェニブによる補助療法・維持療法を加える第I相試験を開始する。【結果】77例のうちVP4/3/2/1を7/22/16/7例、Vv3/2/1を7/17/1例、B4/3/2/1を1/4/6/3例に認めた。術関連死を1例に認め、在院日数中央値は20日。治癒切除群の累積1、3、5年生存率は77、49、39(%)、無再発1,3年生存率は39、29(%)であった。非治癒切除群では、1、3、5年生存率は50、25、0(%)であった。再発53例のうち、肝内再発が大部分を占めた(41例,77%)。【結論】En-bloc法、Peeling off法を使い分け、TT-HCCに対する安全かつ可及的根治的な肝切除を実行し、必要に応じてTACEによる追加治療、close follow-upと適切な再発治療を行うことで、肉眼的脈管侵襲を伴うHCCでも比較的良好な長期成績が得られる。残された課題は、再発の抑制および、遺残病変のコントロールをいかに行うかであり、ソラフェニブを如何に適用するかが一つのポイントである。本会では、前述のtrialについてもpreliminaryに報告する。
索引用語 腫瘍栓, 肝細胞癌