セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 肝S4-4:

門脈腫瘍栓(Vp3, Vp4)を伴う肝細胞癌に対する陽子線治療

演者 菅原 信二(筑波大附属病院陽子線医学利用研究センターDELIMITER東京医大茨城医療センター・放射線科)
共同演者 安部井 誠人(筑波大大学院・消化器内科学), 櫻井 英幸(筑波大附属病院陽子線医学利用研究センター)
抄録 【目的】2005年より「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」が作成されたが,門脈腫瘍栓を有する進行肝細胞癌に対する治療法は定まっていない.筑波大学では1983年より肝細胞癌に対する陽子線治療の研究を行っており,その有効性を報告してきた.今回,我々は,門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する陽子線治療の有用性を検討し,報告する.【方法】1991年2月から2005年9月までに陽子線治療を施行した門脈本幹(Vp4)または一次分枝(vp3)に門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌35例について,門脈腫瘍栓の制御率,生存期間,有害事象を検討した.対象症例の年齢は42~80歳(中央値63歳),男女比は(男性:28例,女性:7例),肝実質内腫瘍の最大径は,25 ~ 130 mm (中央値 60 mm)で,腫瘍栓はVp4:20例,Vp3:15例であった.照射線量は55GyE~79.2GyE(中央値72.6GyE/22分割)であった.背景肝の肝炎はB型:3例,C型:30例,非B非C:2例で,Child-pugh分類は,A:28例.B:7例であった.【成績】観察期間の中央値は42ヶ月(22~113ヶ月)で,32例(91%)で門脈腫瘍栓の制御が得られた.制御できなかった3例は,いずれもVp4症例で,腫瘍栓の照射野外進展であった.うち1例は,再照射により制御でき,74ヶ月無再発生存中である.腫瘍栓が制御できた32例中,25例で照射野外への再発または新出病変を認めた(肝内のみ20例,遠隔転移のみ2例,肝内と遠隔転移3例).2年生存率は48%で,生存期間中央値は22ヶ月であった.CTCAEv3.0によるGrade3以上の有害事象は,白血球減少が治療前2600/μlから1800/μlへ低下した1例のみであった.【結論】予後不良とされる門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する陽子線治療は,安全に施行できるうえに,腫瘍栓の高い制御率を得ることができた.生存期間の延長にも寄与することが示唆された.
索引用語 門脈腫瘍栓, 陽子線治療