セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 外S4-6:

原発性肝細胞癌の肝外転移巣に対する外科的切除の意義

演者 橋本 雅司(虎の門病院・消化器外科)
共同演者 松田 正道(虎の門病院・消化器外科), 渡辺 五朗(虎の門病院・消化器外科)
抄録 【目的】原発性肝細胞癌(HCC)の肝外転移は、肺55%、リンパ節41%、骨28%、 腹膜11%と報告され(Katyal)、第18回肝癌追跡調査では、肺、リンパ節、骨、副腎、腹膜、脳の順に多い。肝内のHCCの治療は確立しているが肝外転移巣に対する有効な治療法は確立していない。これら肝外転移巣に対する外科的切除の意義を検討した。【方法】1995年から2010年までにHCCの切除術が782例施行した。同期間にHCCの腹膜播種切除術を8例(M/F:6/2)に10回施行した。平均年齢60歳(40~76)。リンパ節転移切除術を11例(M/F:9/2)に12回施行した。平均年齢64歳(45~75)。肺転移切除術を28例(M/F:19/9)に31回施行した。平均年齢63歳(50~79)。副腎転移を2例(M:2)2回施行した。適応は他の部位に癌がないものから他の部位の癌がコントロール可能なものまでとした。【成績】HCCの腹膜播種切除術後の1、3、5年生存率は58%、50%、42%であった。リンパ転移切除後の1、2、3年生存率は80%、67%、67%であった。肺転移切除術を1年生存率は50%であった。さらに副腎転移の1例は術後2年の無再発生存中である。初回の加療より肝外転移巣切除までの期間は10年以上の長期の例もあったが、術後の長期生存の因子は単一臓器、肉眼的遺残なしと腫瘍マーカーの上昇がない例であった。【結論】HCCの肝外転移巣切除は限られた症例では有効な場合がある。HCCの肝外転移巣切除は肉眼的な結節のみである可能性があり、肝切除術と比較し手術侵襲が少なく手術部位が離れているため癌の肉眼的遺残がなくなると判断される場合には積極的に試みるべき治療法であると考えられた。
索引用語 肝細胞癌, 肝外転移巣