セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 肝S11-4:

個別化療法実現に向けたC型慢性肝炎のインターフェロン治療応答と発癌規定因子の検討

演者 越智 秀典(広島大・消化器・代謝内科DELIMITER理化学研究所・横浜研究所・ゲノム医科学研究センター消化器疾患チーム)
共同演者 今村 道雄(広島大・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大・消化器・代謝内科DELIMITER理化学研究所・横浜研究所・ゲノム医科学研究センター消化器疾患チーム)
抄録 【目的】3剤併用療法により著効率の改善が期待される一方で副作用への懸念もあり個人差に合わせた治療選択が望まれる。今回、ペグインターフェロン(PEG-IFN)+リバビリン(RBV)併用療法の治療応答に影響する要因および治療後発癌の遺伝的リスクについて検討した。【方法】[1]C型慢性肝炎でPEG-IFN+RBV療法を行った640例についてIL28B、ITPA遺伝子多型、HCVのISDR及びcore領域のアミノ酸変異を含む臨床データと治療応答の関連性について検討した。[2]IFN(単独/併用)療法を完遂効果判定した2752症例(SVR998例、nonSVR1754例)について肝発癌のリスク要因を解析検討した。【成績】[1]PEG-IFN+RBV療法の著効率は61%であった。多変量解析では年齢(p=8.3x10-5)、ウィルス量(p=9x10-6)、IL28B(p=3.6x10-9)、AFP(3.1x10-3)が有意な独立因子であった。これらを用いた回帰モデルにより精度の高い予測が可能であった(真陽性率78%)。ITPA遺伝子多型は治療効果への影響は有意でなかった。[2]SVR例の10年累積発癌率は8%で男性が女性より高率(10%vs3%)であったが、非飲酒例では発癌率に性差が見られず(10%)、また飲酒の影響は男性で顕著であった(29%vs11%)。DEPDC5はSVR例では遺伝子型間に発癌率の差を認めなかった。一方でnonSVR例では有意差を認め、さらに性別で層別化すると男性では有意であったが(p=0.0046)、女性では傾向を認めるが有意でなかった(p=0.29)。MICAおよびIL28Bについては遺伝子型間で発癌率に差を認めなかった。ウィルス側要因ではコアaa70変異型、ISDR変異型(2個以上)で発癌率が上昇する傾向を認めた。多変量解析ではSVR群では性別、年齢、γGTPが有意な発癌リスク因子であった。一方nonSVR群では血小板数、AST、繊維化(F3-4)、DEPDC5が有意な因子であった。【結論】治療効果予測や発癌リスクの推定によってより個人に即した治療選択が可能になってくるものと考えられる。
索引用語 HCV, 個別化医療