セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 肝S4-10:

進行肝癌の治療戦略における分子標的薬の位置づけ

演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 板倉 潤(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】Ope・RFA・TACEで局所根治困難な進行肝癌は遠隔転移および大血管浸潤の有無により治療法や予後が大きく異なる。また多発肝癌TACE症例では分子標的薬導入時期の決定が臨床的に重要である。今回我々は進行肝癌をさらに分類し、集学的治療における分子標的薬の位置づけを検討した。
【方法】2009年7月から2011年3月まで当院にて分子標的薬Sorafenibを導入した進行肝癌64例および多発(4個以上)肝癌・ChildA・初回TACE施行94例を対象とした。Sorafenib導入例では遠隔転移および大血管浸潤(VP3・4)の有無で層別化し全臨床経過と累積生存率を検討した。
【成績】Sorafenib導入例の平均年齢70歳、男性48例・女性16例、ChildA 62例・B 2例、遠隔転移有り21例・なし43例、VP3以上あり20例、なし44例であり、全体のMST174日、TTP90日であった。遠隔転移あり・VP3以上なし群(n=17)ではMST262日であり全体に比し良好であった。VP3以上あり群では有意に累積生存率は低下したが、治療開始4週後のmodified RECIST基準を用いた画像効果判定ではVP3以上なし群と有意差を認めなかった。初回TACE例の1・3・5年生存率は86%・54%・30%であった。TACE効果が不十分でTACE間隔が3か月以内であった群は有意にChild B移行率が高く(p=0.023)累積生存率が低い(p=0.016)結果であった。TACE間隔3か月以内群(n=10)では最終TACEからの生存日数は平均83日であり、これに対しTACE不応・Sorafenib早期導入群(n=21)ではMST392日であった。
【結論】遠隔転移あり・VP3以上なし症例では分子標的薬が第一選択である。遠隔転移なし・VP3以上なし・多発症例では初回治療はTACEが選択されるが、TACE不能(非適応)ではなく不応(効果不十分)の段階で分子標的薬を導入することにより累積生存率が向上する。VP3・VP4症例においても分子標的薬の抗腫瘍効果は認められ、今後複数の治療法を組み合わせた集学的治療が期待される。
索引用語 進行肝癌, 分子標的薬