セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 肝S4-11:

進行肝細胞癌の病期別にみる肝動注化学療法と分子標的薬の治療選択

演者 大西 秀樹(岡山大大学院・分子肝臓病学)
共同演者 能祖 一裕(岡山大大学院・分子肝臓病学), 山本 和秀(岡山大大学院・消化器・肝臓内科学)
抄録 【目的】時間的余裕のない進行肝細胞癌において肝動注化学療法(HAIC)とsorafenibのいずれを第一選択とするかは重要な問題である。現行では高度脈管浸潤を有する症例はHAICを先行し、遠隔転移を合併する症例ではsorafenibが選択されることが多い。今回当科におけるこれまでのHAICとsorafenibの治療効果をretrospectiveに解析することにより、現状の治療選択の妥当性について検討した。【対象】sorafenib承認前後の約4年間に当科においてHAICもしくはsorafenib治療を実施した進行肝細胞癌51症例を対象とした。【結果】30症例はHAICが選択されsorafenibの内服がなかったH群、残り21症例はsorafenibの内服が選択されたS群(併用治療もしくは後治療としてHAICを実施した症例も含む)であった。H群およびS群でそれぞれChild-Pugh分類 A/Bが22/8例と18/3例、Stage II/III/IV A/IV Bが1/6/18/5例と1/2/7/11例であった。全症例のMSTは11.3ヶ月。H群、S群のMSTはそれぞれ14.6ヶ月、7.2ヶ月とH群で良好であったがP=0.33で有意差はなかった。一方、Stage IV A 25症例のサブ解析では、H群のVp3/4の割合が多いにもかかわらず、H群のMSTの方が有意に良好であった(H群:17.1ヶ月 vs S群:6.3ヶ月,P<0.01)。さらにStage IV B 16症例のサブ解析ではS群のMSTの方が良好であった(H群:2.9ヶ月 vs S群:7.2ヶ月,P=0.06)。【結論】進行肝細胞癌の病態は多岐に渡り、症例に応じた治療選択が必要と考えられる。Stage IV Aにおいては肝動注化学療法を、Stage IV Bにおいてはsorafenibを中心とした集学的治療を選択した症例で予後が良好であることが示唆された。
索引用語 肝細胞癌, 分子標的薬