セッション情報 |
シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
進行肝癌に対する治療戦略
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タイトル |
肝S4-12:進行肝癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブ療法の治療成績
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演者 |
寺島 健志(金沢大附属病院・消化器内科) |
共同演者 |
山下 竜也(金沢大附属病院・消化器内科), 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科) |
抄録 |
【目的】当科における進行肝癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブ療法の治療成績を検討した.【方法】2003年3月から2010年12月までに当科でIFN併用肝動注化学療法またはソラフェニブ療法を行った進行肝癌症例のうち,Child-Pughスコア5-7点で肝内病変がある症例を対象とし,肝動注化学療法群(H群)とソラフェニブ療法群(S群)の治療効果,副作用を比較検討した.【結果】対象は203例,年齢中央値67歳,男性が83%,PS 0が85%を占めた.背景肝は,HBs抗原陽性29%,HCV抗体陽性53%,Child-Pughスコア5/6/7が44%/32%/24%であった.24%で肝外病変を,40%で高度脈管侵襲を有していた.治療として肝動注化学療法を172例,ソラフェニブ療法を31例に行った.患者背景ではS群で肝外病変を有する症例が多い以外にH群とS群で有意差はなかった.RECISTv1.1で評価した奏効率は,H群,S群で33%,0%とH群で高かったが,腫瘍制御率は58%,52%と同等であった.全症例での生存期間中央値(MST)は13.0ヵ月,奏効例のMSTは32.4ヵ月であった.治療法別では,H群,S群のMSTは14.4ヵ月,8.6ヵ月とH群で良い傾向であったが有意差はなかった.予後因子として,PS,肝外病変が挙げられた.高度脈管侵襲がない例,HBs抗原陰性例,PS 0の症例,最大腫瘍径50mm未満の症例では有意にH群の予後が良好であった.一方,肝外病変がある例ではS群の予後が良好な傾向があった.副作用として,H群ではGrade3以上の白血球減少を38%,好中球減少を40%,血小板減少を33%に認め,20%にポート関連合併症を認めた.一方,S群ではGrade3以上のAST上昇を19%,ALT上昇を13%に認めた.【考察】今回の検討で,ソラフェニブ療法の対象となる肝癌症例の中に,肝動注化学療法がより有効な症例が存在することが示唆された.また,肝外病変を有する例ではソラフェニブ療法の妥当性が示された.進行肝癌に対しては,これらの条件と予測される副作用を考慮し,肝動注化学療法とソラフェニブ療法を使い分けることが重要であると考えられた. |
索引用語 |
肝動注化学療法, ソラフェニブ療法 |