セッション情報 シンポジウム4(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

進行肝癌に対する治療戦略

タイトル 肝S4-13:

腫瘍マーカーの早期変化と奏功性との関連からみた進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療戦略

演者 中澤 貴秀(北里大東病院・消化器内科DELIMITER中沢内科)
共同演者 日高 央(北里大東病院・消化器内科), 渋谷 明隆(北里大東病院・消化器内科)
抄録 【目的】我々は進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療において治療早期にPIVKAIIの上昇を伴った急速寛解例を報告したが(Case Rep Oncol 2010)、今回腫瘍マーカーの早期変動がその後のソラフェニブの治療効果を反映するかを検討した。【方法】対象は北里大学東病院消化器内科で2011年2月までにソラフェニブが導入され治療効果判定がなされた進行肝細胞癌症例52例(男性45例、女性7例)。治療開始1カ月以内の腫瘍マーカー(AFP, PIVKAII)を治療前値と比較しその後の治療効果、生存率を病勢コントロール群 (CR+PR+SD) とPD群の2群間で後ろ向きに比較検討した。【成績】生存期間中央値7ヵ月(1.5-36.7ヵ月)。年齢中央値68歳(37-83)。背景はHCV/HBV/その他:27/11/14例。肝予備能 全例Child-Pugh grade A(5/6点:36/16例)。PS 0/1/2: 30/20/2例。進行ステージ別2/3/4a/4b: 6/20/9/17例。ソラフェニブ投与開始量800/400/200mg: 46/5/1例。服用期間中央値2.5ヵ月(0.2-15.9)。無再発増悪期間2ヵ月(0.9-15.9)。治療効果はCR/PR/SD/PD: 0/6/21/25例で奏功率(CR+PR) 11.5%、病勢コントロール群は52%。累積生存率は病勢コントロール群85.7%/2年、PD群31.7%/2年 (P = 0.001)。37例(71%)で2倍以上のPIVKAIIの上昇が認められたが両群間に有意差はなかった。PR群とSD群の比較ではPR群ではPIVKAII上昇例が多い傾向にあった(P = 0.071)。一方AFPの検討ではPD群で有意に前値の20%以上の上昇例が多かった(P = 0.002)。累積生存率はAFP20%以上上昇群43%/1年、非上昇群87%/1年であった(P = 0.002)。PR6症例の検討では全例PIVKAIIが2倍以上に上昇しAFPは横ばいないし低下を示した。【結論】治療開始1ヵ月以内にAFPが20%以上上昇する症例はその後PDとなるため他治療も考慮される。一方でPIVKAIIが前値2倍以上に上昇かつAFPが横ばいもしくは低下を示す症例は奏功する可能性があるため治療を継続すべきと考えられた。治療早期の腫瘍マーカーの変動は治療を継続するか否かの判断材料になりうる。
索引用語 ソラフェニブ, 肝細胞癌