セッション情報 シンポジウム5(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH発症の分子機構と治療標的

タイトル 肝S5-1:

脂肪肝におけるCD14発現亢進はNASH発症の一因子である

演者 今城 健人(横浜市立大大学院・分子消化管内科学)
共同演者 藤田 浩司(横浜市立大大学院・分子消化管内科学), 中島 淳(横浜市立大大学院・分子消化管内科学)
抄録 【目的】腸管由来のエンドトキシンがNASH発症に関与する可能性は以前より指摘されている.NASH患者では血中エンドトキシン量が多いとの報告や腸管内の細菌異常増殖が生じるとの報告が根拠となっている.しかしながら血中のエンドトキシン量はNASH患者でさえも極めて微量でありNASH発症進展への関与は未だ不明である.我々は網羅的遺伝子解析を行い肥満モデルマウスではLPSの受容体であるCD14の遺伝子発現亢進していることを確認した.少量のエンドトキシンに対する肝感受性の亢進がNASH発症、進展因子の一つであるとの仮説のもと検討を行った.【方法】(1)肥満モデル(8週齢マウスに高脂肪食を12週間投与における肝臓でのCD14発現を検討(mRNA及び免疫染色).(2)肥満モデルでの低用量LPSに対する反応性の検討のため低用量LPS(0.25mg/kg)を腹腔内に一回投与後の肝臓の病理学的変化及び遺伝子、蛋白発現変化を検討した.(3)肥満モデルでの長期低用量LPS暴露に対する反応性の検討のためLPS(0.25mg/kg)を腹腔内へ4週間連日投与した後の肝臓の病理学的変化及び遺伝子、蛋白発現変化を検討した.【成績】(1)肥満モデルでは肝クッパー細胞でCD14の発現亢進を認めた.(2)肥満モデルでは低用量LPS一回投与に対する反応性(病理学的変化、血清ALT、肝TLR4及びTNFαmRNAの変化を含む) がコントロールに比し有意に亢進していた.(3)肥満モデルでは少量LPSの4週間暴露によりTLR4、IκBα及びTNFαなどのシグナル及び炎症細胞浸潤はコントロールと比し著明であった.肥満モデルでのみ低用量LPSの暴露後の肝collagen1α1 mRNAの増加及び線維化の進展が認められた.【結論】高脂肪食の負荷による肥満が、肝臓でのCD14陽性クッパー細胞を増加しLPSへの感受性を亢進させるという新規の病態機序が示唆された.肥満は腸管内細菌の異常増殖を起こし血中のエンドトキシンを増加させるだけでなくその感受性の亢進がNASH病態の進展に大きく関与する可能性があり、新規の治療標的になりうる可能性が示唆された.
索引用語 CD14, NASH