セッション情報 シンポジウム5(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH発症の分子機構と治療標的

タイトル 肝S5-2:

ヒト好中球ペプチド-1はNASH動物モデルの肝線維化を促進する

演者 宇都 浩文(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 指宿 りえ(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大・消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症機序としてtwo hit theoryが提唱され、肥満や糖尿病によるインスリン抵抗性を基盤に脂肪肝(first hit)となり、酸化ストレスやエンドトキシンなどのsecond hitが脂肪肝からNASHへの進展に重要であると言われている。また、好中球浸潤を伴う肝細胞壊死はNASHやアルコール性肝障害の組織学的特徴の一つである。本研究では、好中球から分泌されるヒト好中球ペプチド(HNP)-1に着目して、NASH動物モデルの一つであるコリン欠乏アミノ酸置換食飼育(CDAA食)マウスの病態進展に及ぼす作用を解析し、NASHの病態との関連を検討した。
【方法】HNP-1 cDNAをCAGプロモーターで発現制御するトランスジェニック(TG)マウスを作製した。TGマウス及びWild-type(WT)マウスにCDAA食を16週間投与し、血清、肝組織を採取して比較した。
【成績】血清中HNP-1濃度が約40ng/mlであるHNP-1高発現Tgマウスと約4ng/mlのHNP-1低発現Tgマウスを作製した。これらのマウスとWTマウスのCDAA食投与後のALT、ALP、LDHを比較したが、3つのマウスで明らかな差はなかった。また、血清中の血糖、総コレステロール、中性脂肪にも差はなかった。さらに、Oil-red O染色後の画像処理による脂肪化面積と肝中性脂肪含量で3群間の脂肪肝の程度をそれぞれ比較したが、有意差はなかった。しかし、HNP-1低発現TgマウスやWTマウスと比較して、HNP-1高発現Tgマウスの血清ヒアルロン酸と肝組織中ハイドロキシプロリン含量は高値で、肝組織中のSirius-red染色陽性面積とα-SMA陽性面積は有意にHNP-1高発現Tgマウスが高値であった。
【結論】HNP-1はCDAA食による脂肪肝には影響しなかったが、肝線維化を促進した。脂肪性肝疾患において、好中球から分泌されるHNP-1は肝線維化を促進すると考えられ、NASHにおけるsecond hitに関与する可能性がある。
索引用語 HNP-1, NASH