抄録 |
(目的) NASHは脂肪肝が形成された後に、酸化ストレスなどの2nd hitが加わることでNASHへ進展するtwo hits theoryが広く浸透している。しかし単純脂肪肝でも酸化ストレスマーカーは上昇していることからtwo hits theoryでNASH発症をすべて説明するのも困難である。我々はむしろ脂肪肝に先行し、Kupffer細胞などの非実質細胞が活性化され、肝細胞での脂肪蓄積はむしろ非実質細胞の状態に付随する変化でないかと考えている。そこで我々は、「NASHの非実質細胞起因説」を提案したい。(方法) 肝非実質細胞のうち、Kupffer細胞のNASHでの役割検討のため、1) clodoronate静脈投与によるKupffer細胞除去後のNASHを評価、2)骨髄移植によるキメラマウス(Kupffer細胞のTLRを欠損させた状態)でのNASH評価。さらに浸潤マクロファージの検討のため、ケモカインMCP-1の受容体であるCCR2の欠損マウスを用いたNASHの評価を行った。(成績) WT マウスにコリン欠乏食2週間投与では肝に炎症性細胞の浸潤と中等度脂肪肝を認め、Ly6C陽性骨髄由来炎症性マクロファージの浸潤が増加した。一方、clodronateによるKupffer細胞除去後のコリン欠乏食2 週投与では炎症細胞浸潤および脂肪肝の軽減し、Ly6C陽性炎症性マクロファージの浸潤も抑制された。TLR2およびTLR4の各KOマウスへのコリン欠乏食長期投与ではNASHが軽減したが、これらのキメラマウスによる検討でもKupffer細胞のTLRが欠損することで、NASHが軽減した。これらのうち、TLR2マウスにおいては脂肪肝の程度と炎症とは必ずしも一致せず、NASH発症には脂肪肝の程度よりKupffer細胞の反応性が重要と考えられた。WTマウスにコリン欠乏食長期投与では肝臓内でのMCP-1およびCCR2発現が増加した。CCR2KOマウスではWTマウスと比較し、Ly6C陽性細胞を含む炎症細胞浸潤が抑制され、炎症性サイトカインの低下が見られ、脂肪肝も抑制された。よってNASHの進展には炎症性細胞のリクルートが重要と考えられた。(結語) NASH発症や進展に脂肪肝の程度より肝マクロファージの反応性と炎症細胞のリクルートが重要である。 |