セッション情報 |
シンポジウム5(肝臓学会・消化器病学会合同)
NASH発症の分子機構と治療標的
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タイトル |
肝S5-5:高コレステロール食摂取が、非アルコール性脂肪肝炎病態機序に果たす役割に関する検討
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演者 |
冨田 謙吾(防衛医大・2内科) |
共同演者 |
日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科), 三浦 総一郎(防衛医大・2内科) |
抄録 |
【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH) には背景因子として高コレステロール血症を伴うことが多く、病態機序への関与が示唆されるがその詳細は明らかではない。今回、高コレステロール食(HC食)とメチオニン・コリン欠損食(MCD食)とを組み合わせ給餌し、高コレステロールNASHモデルを作成することにより、NASH病態機序において高コレステロール状態が及ぼす影響につき検討をおこなった。【方法】C57BL/6マウスにコントロール食、HC食、MCD食、MCD+HC食飼料摂取を各々8週間施行し、血清学的・組織学的検討を含めた詳細な検討をおこなった。胆管結紮もしくは四塩化炭素を用いた肝線維化モデルでも同様の検討をおこなった。また高コレステロール食摂取が肝臓伊東細胞(HSC)の活性化に及ぼす影響を検討するために、各食餌摂取マウス群よりHSCを分離しin vitro解析も施行した。【成績】MCD食摂取によりNASH病態が形成された。MCD+HC食により、NASHの肝臓線維化病態がさらに有意に増悪していた。クロドロネート処理によりKupffer細胞を枯渇させた状態で同様の検討を施行したが、やはりMCD食摂取群に比較し、MCD + HC食摂取群において肝臓線維化病態が有意に増悪した。肝臓線維化モデルでも同様の結果であった。HC食摂取により、HSC内の遊離型コレステロール(FC) 含有量は有意に上昇していた。In vitroでのFC蓄積HSCモデルの検討では、FCが蓄積することにより、HSCのTGFβ感受性が有意に増強することが明らかとなった。FC蓄積HSC では、細胞膜TLR4蛋白量が上昇し、TGFβの偽受容体bambi発現量が有意に低下しており、主要な病態機序と考えられた。【結論】高コレステロール食摂取は、NASH肝臓線維化を増悪させる事が明らかとなった。HSCにおいては、FCの蓄積によりTLR4シグナルが増強し、bambi発現量低下を介しTGFβ刺激易感受性となる。これがコレステロール過剰摂取によるNASH肝線維化病態増悪の主要な病態機序と考えられ、治療標的となるものと推察された。 |
索引用語 |
コレステロール, bambi |