セッション情報 |
シンポジウム5(肝臓学会・消化器病学会合同)
NASH発症の分子機構と治療標的
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タイトル |
肝S5-6:糖転移酵素N-アセチルグルコサミン転移酵素(GnT-V)はマウスNASH進展を抑制する
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演者 |
鎌田 佳宏(大阪大・消化器内科DELIMITER大阪大大学院・機能診断科学) |
共同演者 |
三善 英知(大阪大大学院・機能診断科学), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】糖鎖は蛋白質の翻訳後修飾を担う重要な生体分子として近年注目されている。GnT-Vはβ1-6GlcNAc鎖という特殊な糖鎖構造を形成する酵素で、癌化および癌の転移と最も関連の深い糖転移酵素の1つである。GnT-Vは正常肝ではほとんど発現せず、慢性肝炎や肝再生時に発現上昇する。しかし慢性肝炎進行過程でのGnT-Vの働きは未だ明らかではない。今回GnT-Vトランスジェニック(Tg)マウスを用い、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルである高脂肪高コレステロール食(HFHC食)投与マウスで検討を行った。【方法】雄TgマウスとC57Bl6/J(WT)マウスにHFHC食を4週間投与して比較検討した。また各マウスから脾細胞(SC)、肝星細胞(HSC)を分離し、in vitroでの検討も行った。【成績】WTマウスでは著明なリンパ球浸潤を伴った肝炎および肝線維化が見られたがTgマウスではほとんど炎症を認めず、肝線維化も軽減していた。GnT-Vの肝炎抑制作用の機序を検討するためにTgおよびWTマウスからSCを分離し、抗CD3/28抗体刺激後のサイトカイン産生能を検討した。TgマウスSCは、Th2系サイトカインの産生が亢進し、逆にTh1系サイトカイン産生は低下していた。次にTgおよびWTマウスからHSCを分離(Tg-HSC, WT-HSC)し比較検討した。Tg-HSCでは細胞膜TGF-β受容体発現が増加し、TGF-βシグナルの増強が認められたにもかかわらずコラーゲン遺伝子発現の抑制がみられた。DNAアレイの結果、Tg-HSCでCOX2発現が著明に増加しており、プロスタグランディンE2(PGE2)産生も著明に増加していた。COX2阻害剤celecoxibによりTg-HSCのPGE2産生は低下し、コラーゲン発現は上昇した。【結論】GnT-Vはリンパ球と肝星細胞の機能を調節することでマウスNASHモデルの肝炎及び肝線維化を抑制した。これらの結果は、NASHの進展に糖鎖が関与すること、その詳細な分子機構の解析は新しい治療戦略につながる可能性を示唆する。 |
索引用語 |
GnT-V, NASH |