セッション情報 シンポジウム5(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH発症の分子機構と治療標的

タイトル 肝S5-7:

NASH発症におけるPNPLA3 (adiponutrin)遺伝子のERストレスへの役割について

演者 小野 正文(高知大・消化器内科)
共同演者 越智 経浩(高知大・消化器内科), 宗景 玄祐(高知大・消化器内科)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症および増悪に遺伝的要因が関与することが明らかになってきた。その中、PNPLA3 (adiponutrin)遺伝子のrs738409(G) alleleは肥満者や肥満児において高率にNASH発症と関連するvariantとして注目されている。しかし、PNPLA3遺伝子欠損マウスはwild typeと比べてphenotypeに違いを見出さないなど、PNPLA3遺伝子のNASH発症における重要性が懸念されるようになってきた。最近、PNPLA3と極めて近いhomologueを持つ PNPLA2 (adipose triglyceride lipase: ATGL)遺伝子欠損がERストレスを抑制することで脂肪肝における肝障害を抑制していることが報告された。ERストレスはNASH発症の重要な原因となっており、PNPLA2のNASH発症における役割が注目される。そこで、今回我々はPNPLA3遺伝子のERストレスに対する役割を検討することを目的とした。 【方法】wildマウス(C57BL/6マウス)およびPNPLA3欠損マウスに対し、通常餌および高脂肪食にて飼育し、肝臓における脂質代謝に関する遺伝子変化および組織学的変化について検討を行った。また、PNPLA3欠損マウスに対し、ERストレスを惹起させる目的でtunicamycin(TM)を投与し、肝臓における脂質代謝に関する遺伝子変化および組織学的変化について検討を行った。   【成績】wildマウスに対し高脂肪食にて飼育することにより肝臓におけるPNPLA3発現が明らかに増加した。しかし、高脂肪食で飼育したPNPLA3欠損マウスの肝臓の組織も脂質代謝に関する遺伝子変化もwildマウスと違いを見出す事は出来なかった。また、PNPLA3欠損マウスに対しERストレス負荷により、肝の脂肪化はwildマウスよりも増加したが、脂肪酸β酸化マーカーは抑制されていた。また、肝の炎症やTNF-α産生は抑制されていた。 【結論】PNPLA3はERストレスの抑制に関与するとともに、肝の脂質代謝に影響を与える可能性が示唆された。今後、NASH発症におけるPNPLA3の役割についてさらに検討をすることが重要であると思われた。
索引用語 NASH, ERストレス