セッション情報 シンポジウム6(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の実用性

タイトル 内S6-1:

職域検診における胃がんリスク検診(ABC検診)の有効性

演者 小田島 慎也(東京大・消化器内科)
共同演者 藤城 光弘(東京大附属病院・光学医療診療部), 三木 一正(日本胃がん予知・診断・治療研究機構)
抄録 【目的】1991年よりPG法単独で胃がん検診を行っていた都内某企業グループ診療所において、2007年度から血清抗H.pylori抗体値(Hp)と血清ペプシノゲン法(PG)の併用による胃がんリスク検診(ABC検診)が職域検診として開始された。2007、2008、2009年度の総検診受診者は48,073名(男/女=3.6、平均年齢47.4歳)。受診者をHpとPGの組み合わせでA群(Hp陰性、PG陰性)、B群(Hp陽性、PG陰性)、C群(Hp陽性、PG陽性)、D群(Hp陰性、PG陽性)の4群に分類し、B群は3年毎、C群は隔年、D群は逐年の内視鏡精査対象とした。本検討では当診療所におけるABC検診の有効性を検討する。【方法】2007、2008、2009年度のABC検診の結果(各群の内訳、要内視鏡精検者数、発見胃がんの詳細)から、ABC検診の有効性の評価を行う。【結果】総受診者のA/B/C/D群の内訳は73.2%/16.4%/9.3%/1.1%であり、3年の経過でA群は年率約3%増加、B群は年率約3%減少の傾向が認められた。各群直近の内視鏡検査時期を調査し、6,965名(B群:4,202名、C群:2,346名、D群:417名)が内視鏡精検対象となり、総受診者の14.5%に相当した。内視鏡精検は、3,921名(B群:2,244名、C群:1,436名、D群:241名)が行い、23症例の胃がん(2007年度:12症例、2008年度:8症例、2009年度:3症例)が発見された(B群:16症例、C群:7症例)。発見胃がん中、78.3%(18症例)が早期胃がんで発見され、52.2%(12症例)が内視鏡治療適応の分化型粘膜内がんであった。進行胃がんは5症例認めたが、いずれも当検診初回受診者であった。また発見胃がんの47.8%は未分化癌であり、その割合は増加傾向にあった(2007年度:25.0%、2008年度:62.5%、2009年度:100%)。【結論】3年という短い期間の検討ではあるが、各群の割合の傾向、要内視鏡精検者数、発見胃がんの詳細を考慮すると、ABC検診は、胃がんのハイリスク群を絞り込み、未分化癌を含めた胃がんを効率的に発見できる有効な職域検診法であると考えられた。
索引用語 胃がん, ABC検診