セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 消S11-6:

肝細胞癌に対する重粒子線治療

演者 柿崎 暁(群馬大大学院・病態制御内科学)
共同演者 小山 佳成(群馬大・放射線科), 桑野 博行(群馬大大学院・病態総合外科学)
抄録 【目的】重粒子線治療は、体内での優れた線量集中性と高い生物効果を特徴とし、通常放射線治療よりも良好な結果が期待できる。群馬大学重粒子線医学研究センターでは、炭素イオン線を用いて2010年3月から様々な部位の悪性腫瘍を対象とした治療を開始している。今回、肝細胞癌治療に対する当施設での試みを報告する。【対象及び方法】2010年3月から2011年12月までに、群馬大学重粒子線医学研究センターで重粒子線治療を受けた271例のうち、肝細胞癌14例を解析した。照射は、呼吸同期を用いて52.8GyE/4分割/4日間にて行った。適格条件として、腫瘍栓や衛星結節を持つ場合は主腫瘍と連続もしくは近接、門脈及び胆管内腫瘍栓は二次分枝まで、静脈内腫瘍栓は肝静脈まで、リンパ節・肝外転移なし、年齢20-80歳、Child-Pugh分類 AまたはB、PS 0-2、最大径10 cm以下とし、それ以外の症例を適応拡大病変とした。【結果及び考察】適格症例は6例で、平均年齢71.8歳(範囲:64-78)、平均腫瘍径 34.2 mm(19-50 mm)、全例単発、背景肝疾患はアルコール1例:C型5例、Child A 5例 B1例であった。局所制御効果は良好で、局所再発はなく、2例で肝内異所性再発を認めた。副作用として、グレード1の放射線性皮膚炎を全例に認め、放射線性肺臓炎を6例中2例(33.3%)に認めたが、重篤なものはなかった。肝機能の変化は軽微であった。適応拡大病変は8例で、年齢や腎障害などで除外されたが、大きな合併症もなく、全例治療が可能であった。【結語】当院における肝細胞癌の重粒子線治療は、開始して間も無く、症例数はまだ少ないが、局所制御率は、腫瘍の大きさ、部位にかかわらず良好で、高齢者でも比較的安全に治療効果を発揮できた。肝細胞癌治療の選択肢のひとつとして有効なツールと考えられ、今後、重粒子線治療が肝細胞癌の治療法として広く認識されるように症例数を追加し検討していきたい。
索引用語 肝細胞癌, 重粒子線