セッション情報 |
シンポジウム6(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
消化器がん検診における新しい診断法の実用性
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タイトル |
検S6-2:胃がん発生リスク分類を基盤とした効率的な胃がん検診
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演者 |
井上 和彦(川崎医大・総合臨床医学) |
共同演者 |
藤澤 智雄(松江赤十字病院・消化器内科), 近藤 秀則(近藤病院(岡山)) |
抄録 |
胃がん発生にはHelicobacter pylori(Hp)感染が必要条件と考えられ、その中でも進行した胃粘膜萎縮は高危険群である。逆にHp未感染の人に胃がんが発生することは非常に稀で超低危険群であり、罹患率が高いがんに対して行われるべき検診においてはその後の対象から除外することも可能であろう。1995年度から開始した血清Hp抗体とペプシノゲン(PG)法の組み合わせによるABC分類は胃がん発生リスク分類である。実際、人間ドック受診者8286名を対象に同じ日の内視鏡検査を基準とした検討では、C群:PG(+)での胃がん発見率が最も高く1.87%(39/2089)であった。次いでB群:Hp(+)PG(-)の0.21%(7/3395)であり、A群:Hp(-)PG(-)2802名からは1例の胃がんも発見されなかった。各群における胃がん発見率に有意差を認めた。また、内視鏡経過観察発見胃がんでの検討でも同様の結果が得られた。さらに、経過観察発見胃がんの検討では、B群の中で胃粘膜炎症の強さを反映していると思われるPG II≧30ng/mLも胃がん高危険群と判断できた。ABC分類は簡便な血液検査であり、一度に多数の検体を処理することが可能である。被験者への侵襲性はほとんどなく、その費用も安価である。さらに、その判定において達人は不要であり、基準に沿って行えば誰が判定しても同じ結果が得られるというメリットもある。本邦におけるHp感染率は非常に速いスピードで低下しており、血液検査でHp未感染者を明らかにできれば、対象を絞った効率的な胃がん検診システムを確立できると思われる。ただし、本法は胃がんそのものを診断する方法ではないことを忘れてはならず、リスクに応じて画像検査も行わなければならない。また、現在までのところ、死亡率減少効果を示すことはできておらず、地域検診などで証明する必要もあろう。地域医師会と協力してB群の細分類も含めた胃がん検診システムを立ち上げており、その取り組みも紹介する。 |
索引用語 |
ABC分類, 胃がん検診 |