抄録 |
【目的】我々は糞便中のmRNA発現を指標にした大腸がん診断法Fecal RNA test(以下FRT)を開発し、その有用性を報告してきた。今回、cyclooxygenase 2 (COX-2), matrix metalloproteinase 7 (MMP-7), beta2-microglobulin (B2M), creatine kinase B (CKB)の4マーカーについて、与えられた課題に対し検討を行ったので報告する。【方法】内視鏡的・病理的に診断された大腸進行腫瘍135例 (がん111例、進行腺腫24例)と対照群135例を対象とした。糞便0.5gからRNAを抽出し、qRT-PCRでCOX-2, MMP-7, B2M, CKBの解析を行った。【結果】いずれのマーカーも症例群が対照群に比し有意に発現が上昇し、COX-2, MMP-7は対照群においてほぼ発現を認めなかった。各マーカーのカットオフ値を対照群全体の97.5percentileに設定すると、特異度はRNAマーカーでは98.5%-100%、FOBTは96.3%であった。がん、進行腺腫の感度は、COX-2は75.7%, 33.3%、MMP-7は55.9%, 33.3%、B2Mは24.3%, 25.0%、CKBは28.8%, 25.0%でCOX-2が最も高かった。B2MとCKBは 単独では充分な感度を持たないが、併せてCOX-2陰性例11例の拾い上げが可能であり、4マーカーいずれかが陽性である感度はがんで84.7%, 進行腺腫で70.8%と充分な感度を得た。FRTはFOBT同様非侵襲だが、偽陰性、偽陽性という不利益を持ち、1日の処理能力は現時点で約20検体(ハイスループット装置の開発中)、コストは1マーカー当たりランニングで2400円、4マーカーで5700円、また死亡率減少効果のエビデンスはない。【結論】FRTは大腸がん診断、特に早期診断に優れている。FOBT同様の不利益、現時点での高コストと処理能力の低さ、そして死亡率減少効果のエビデンスがないことが問題である。ハイスループット装置の開発による処理能力の向上とコストの低下、そしてEBMの構築が重要である。 |