セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 消S7-2:

低用量アスピリン長期服用者における内視鏡的胃粘膜傷害と胃酸分泌・胃粘液分泌との関係

演者 飯島 克則(東北大・消化器内科)
共同演者 荒 誠之(東北大・消化器内科), 石原 和彦(北里大・生体制御生化学)
抄録 近年、低用量アスピリン(LDA)による胃粘膜傷害が増加しており、その病態発生を理解することは重要である。我々は、endoscopic gastrin test (EGT)法を用い、胃酸分泌のレベルがLDAによる胃粘膜傷害に重要であることを報告した(JG in press)。今回の検討では、LDA長期服用者における胃粘膜傷害、胃酸分泌、胃粘液分泌の関連を検討することを目的とした。【方法】対象はLDA長期服用者42人、性・年齢をマッチさせた非服用者42人、各々の平均年齢は68±8、66±7歳。EGT法によって採取された胃液を2つに分け保存し、一方は滴定法で胃酸分泌量(mEq/10min)を測定し、もう一方は、 ゲル濾過法で分離し、hexose量を測定して胃粘液分泌量(μg hexose/10min)を測定した。両法での測定のため、採取胃液量が10ml未満の症例はあらかじめ除外した。LDA服用者における内視鏡的胃粘膜傷害の程度をmodified LANZA scoreで評価し、スコア4以上を胃粘膜傷害ありとした。H. pylori(HP)は血清抗体法を用いて評価した。【結果】LDA服用者、非服用者でHP感染率に有意差はなかった(50% vs. 55%)。LDA服用者は非服用者に比べ、胃酸分泌は同程度であったが(3.3±2.4 vs. 2.9±1.8)、粘液分泌量が有意に高い値を示し(4.1±4.8 vs. 2.4±1.3、P<0.05)、その結果、酸/粘液分泌比(1.2±1.0 vs. 1.7±1.4、P<0.05)は有意に低値であった。LDA服用者のうち胃粘膜傷害なしの症例では、非服用者に比べ粘液分泌は有意に高く、酸/粘液分泌比は有意に低かったが、粘膜傷害ありの症例ではそのような傾向はみられなかった。これらの結果は、HP陽性者、陰性者で同様であった。【結論】全体としてLDA長期服用者での胃粘液分泌は高い値を示し、胃粘膜のLDAに対する適応反応と考えられた。しかしながらLDA服用者のうち胃粘膜傷害を有する症例では、この適応反応が阻害されている可能性が考えられた。LDAによる胃粘膜傷害において、胃酸分泌だけでなく、胃粘液分泌のレベルも重要であることが示された。
索引用語 胃粘液分泌, 胃粘膜傷害