セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 消S7-4:

長期低用量アスピリン服用者における出血性消化性潰瘍の検討

演者 三宅 一昌(日本医大・消化器内科)
共同演者 楠 正典(日本医大・消化器内科), 坂本 長逸(日本医大・消化器内科)
抄録 【目的】 抗血小板薬による心血管系イベント予防の汎用化が進み、低用量アスピリン(L-ASA)による消化性潰瘍出血が問題化している。L-ASAによる潰瘍出血率は年間1~2%程度であるが,潰瘍出血のサロゲートマーカーである無症候性の内視鏡的潰瘍(3mm以上の粘膜欠損)の有病率は10~15%に及ぶ。抗血小板作用を有する長期L-ASAによる内視鏡的潰瘍の多くは無症候性で、長期にわたり潜在性出血を来たす可能性がある。そこで今回,長期L-ASAに関連する内視鏡的潰瘍と消化管出血を疑う症状(出血関連症状)との関連および抗潰瘍薬の予防効果を検討した。【方法】 対象は心臓カテーテル検査(CAG)を行い,長期L-ASA内服を必要としたIHD患者とした。CAG後2年間に施行した上部内視鏡検査および診療録から情報を収集した。 出血関連症状は,吐下血または原因不明のHb低下(1.5g/dL<)とし、出血関連症状に加え内視鏡的消化性潰瘍を認めた場合を出血性消化性潰瘍とした。【成績】 対象は,538例、平均年齢67.4±10.6歳、男性74.4%で、16%に三枝病変および52.5%に抗潰瘍薬(PPI、常用量H2RA)併用を認めた。上部内視鏡検査を行った96例のうち、吐下血例の54.5%(6/11)および原因不明Hb低下例36.4%(8/22)に内視鏡的潰瘍を認め、出血関連症状を伴わない例3.2%(2/63)と比べ有意に高率であった(P<0.01)。つまり、出血性消化性潰瘍の年間発症率は1.3%(2年間で538例中14例, 平均72.4歳,潰瘍出血までの期間の中央値:91日)であった。一方、抗潰瘍薬である、PPI・H2RA併用例における出血性潰瘍発症率はいずれも非併用例と比べ有意に低率(0.45%, 0.3% vs 2.35%: P<0.05)であった。【結論】L-ASA長期服用者では、吐下血など顕性の出血性潰瘍だけでなく、潜在性出血をきたしうる内視鏡的潰瘍をターゲットとした、PPIまたは常用量H2RAによる予防治療が望まれる。
索引用語 低用量アスピリン, 消化性潰瘍