セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 消S7-5:

循環器疾患患者における低容量アスピリンよる消化管出血性病変の検討

演者 平田 慶和(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
共同演者 片岡 洋望(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学), 城 卓志(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】 循環器疾患における低容量アスピリン(LDA)内服患者の増加に伴い,アスピリン起因性消化管出血性病変も増えている.今回我々は,LDA内服循環器疾患患者における消化管出血性病変の発生につき, LDA非内服の対照群とともに検討した.
【方法】 2004~2010年の当院循環器科受診患者のうち,LDA内服群(A群:968名),年齢,性をマッチさせたLDA非内服コントロール群(Cont群:968名)を対象とした.内視鏡的に確認しえた上部・下部消化管出血(UGIB・LGIB)の発生率とともに,便潜血陽性で上部・下部消化管に病変を認めず,かつHb値が2g/dl以上低下した患者を小腸出血疑い症例(small intestinal bleeding : SIB)と定義し合わせて検討した.またA群において,LDA内服期間別(3カ月未満・3カ月以上),抗潰瘍薬別(PPI・H2RA・粘膜防御剤),LDAの剤型別(制酸緩衝錠・腸溶錠)に出血性病変発生率を検討した.
【成績】 1:両群における出血性病変発生頻度はUGIBではA群:Cont群=2.7%:0.7%(p<0.05),LGIBでは0.7%:0.1%(NS),SIBでは1.0%:0.3%(p<0.05)であった.2:A群でのLDA内服期間別の発生率(3カ月未満:3か月以上)は,UGIB 1.7%:3.1%,LGIB 0.7%:0.7%,SIB 0%:1.0%であった.3:抗潰瘍薬別の検討ではPPIが有意にUGIBの発症を抑制していた(p<0.05).4:LDA剤型別の比較では,UGIB発生率は剤型による差を認めなかったが,SIBの発生率は腸溶錠で有意に高率であった(p<0.05,log-rank test).
【結論】 LDAの長期内服はUGIBおよびSIBの誘因になると考えられ,特に腸溶錠では小腸粘膜障害に注意が必要と考えられた.
索引用語 低容量アスピリン, 消化管出血