セッション情報 |
シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)
低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date
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タイトル |
消S7-6:低用量アスピリンの長期投与時にみられる胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発症に対するランソプラゾールの抑制効果の検討
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演者 |
榊 信廣(早期胃癌検診協会中央診療所) |
共同演者 |
蘆田 潔(済生会中津病院・消化器内科), 溝上 裕士(筑波大・光学医療診療部) |
抄録 |
【目的】血栓・塞栓形成抑制等のために低用量アスピリンの長期投与が必要な患者に対するランソプラゾール(以下、LPZ)の胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症抑制効果を多施設共同二重盲検比較試験により検討した。【方法】低用量アスピリンの長期投与が必要で、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往があり、文書同意が取得できた被験者をLPZ投与群(1回15mg1日1回)とPseudo Placebo としてのゲファルナート(以下、GE)投与群(1回50mg1日2回)に無作為割付した。治験薬投与開始3、6、9、12ヶ月後、それ以降は6ヶ月ごと又は潰瘍発症の疑いがある場合には随時内視鏡検査を実施し、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症の有無を確認した。潰瘍の発症は3mm以上の白苔を有する粘膜欠損と定義した。胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往及び発症は中央判定委員会で統一した判定を行った。治験の継続・中止の要否を検討する目的で効果安全性評価委員会を設置し、倫理面の観点から中間解析を実施することを予め規定した。また、発症した潰瘍は、中央判定委員会により内視鏡的観点からも検討を行った。【成績】中間解析の結果、効果安全性評価委員会から治験中止が勧告され治験が中止された。最終解析時における主要評価項目である「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症率」について、Kaplan-Meier法により算出した累積発症率は、治療期開始361日ではLPZ群3.7%、GE群31.7%であった。GE群に対してLPZ群では潰瘍の発症リスクが有意に低く(logrank検定:p<0.0001)、ハザード比は0.099(95%信頼区間:0.042~0.230)であり、潰瘍の発症リスクを90.1%低減した。LPZ群の有害事象の発現頻度及び内容は、GE群とほぼ同様であった。また、LPZ群では浅く小さな潰瘍が発症したが、GE群では凝血を伴う深く大きな潰瘍が発症した。【結論】LPZの1回15 mg1日1回投与は、低用量アスピリンの長期投与が必要な患者における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制に対して有効と考えられた。 |
索引用語 |
低用量アスピリン, 潰瘍再発抑制 |