セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 内S7-7:

低用量アスピリンによる上部消化管粘膜障害に対するプロトンポンプ阻害薬の予防効果

演者 藤田 剛(神戸大大学院・消化器内科学)
共同演者 佐貫 毅(神戸大大学院・消化器内科学), 東 健(神戸大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景・目的】低用量アスピリンが上部消化管粘膜障害を引き起こすことはよく知られている。我々の後ろ向き調査では危険因子の一つは消化性潰瘍の既往であり、もう一つは高齢、抗血栓薬、ステロイド、NSAIDsのうちの複数の因子をもつことであった。予防因子はPPI、H2RAであった。(Tamura I. et al. Intern Med 49, 2537-2545, 2010) 今回我々は本邦における低用量アスピリンによる上部消化管粘膜障害に対するPPIの予防効果を明らかにするために多施設参加の無作為前向き研究(CARE研究)をおこなった。【方法】消化性潰瘍の既往があり低用量アスピリンが継続処方されている虚血性心疾患、脳血管疾患の患者を対象とし内視鏡検査にて活動性の潰瘍がないことを確認したうえで登録を行い、3群(低用量PPI群:ラベプラゾール10mg、高用量PPI群:ラベプラゾール20mg、粘膜防御薬群:ゲファルナート100mg)に無作為に割り付けを行った。登録前および12週後に内視鏡検査をおこない、ランザスコアによる胃十二指腸粘膜障害(3ミリ以上の粘膜欠損を潰瘍とする)、びらん性逆流性食道炎の有無とgradeの評価をおこなった。また、登録時、4週、8週、12週に自覚症状と問診票によるQOLを調査した。【結果】2008年8月から2010年8月までに28施設で280例が登録された。最大解析集団は261例(男性185例、女性76例、平均年齢72才)であり、ピロリ菌は検査が行われた230例中110例で陽性であった。終了時までの胃または十二指腸潰瘍の発生率は低用量PPI群7.4%、高用量PPI群3.7%、粘膜防御薬群26.7%であり、PPI群と粘膜防御薬群との間に統計学的に有意差を認めた(p<0.0001)。登録時にびらん性食道炎がなかった222例において終了時までに、低用量PPI群74例中1例、高用量PPI群76例中1例、粘膜防御薬群72例中6例にびらん性食道炎の発生を認めた。【結論】ゲファルナートと比較して、PPIは低用量アスピリンによる上部消化管粘膜障害に対する有意な予防効果を認めた。(CARE研究参加施設の詳細は発表時に報告します。)
索引用語 アスピリン, プロトンポンプ阻害薬