セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 消S7-8:

低用量アスピリン内服患者における逆流性食道炎発症の検討

演者 宮脇 喜一郎(朝日大村上記念病院・消化器内科)
共同演者 加藤 隆弘(朝日大村上記念病院・消化器内科), 小島 孝雄(朝日大村上記念病院・消化器内科)
抄録 【背景と目的】低用量アスピリン(以下LDA)による胃・小腸粘膜障害に関して多くの報告がなされているが、食道粘膜への影響につき検討した研究は少ない。今回LDA内服患者の逆流性食道炎の実態に関してretrospectiveに検討した。【対象と方法】2009年2月から2010年6月までに当院にて上部消化管内視鏡検査を施行した患者のうち、LDA内服者131人(男:73人、女:58人、年齢)と性・年齢をマッチさせたLDA非内服者132人(男:68人、女:64人)を対象として逆流性食道炎の有無につき比較検討した。逆流性食道炎所見はロサンゼルス分類に準じて診断した。また、酸分泌抑制剤(PPI、H2RA)、胃粘膜保護剤併用、循環器用薬(ワーファリン、β拮抗剤、Ca拮抗剤、硝酸剤)、他のNSAIDsの併用の有無、腺萎縮境界型(木村・竹本分類:open type、closed type)、食道裂孔ヘルニアの有無、胃十二指腸潰瘍の有無との関係も検討した。【結果】LDA内服患者ではLA-M:A:B以上は各々20%:9%:2%であり、対象13%:3%:2%と比較して優位に高かった(p<0.05)。併用の胃酸分泌抑制剤での検討ではLA-M以上の粘膜障害を認めた症例の割合は、LDA服用者ではPPI:H2RA:投薬なしが22%:36%:57%であり、対象の13%,27%,28%より優位に高かった(p<0.05)。LDA服用者のうちLA-M以上の逆流性食道炎症例の63%が食道裂孔ヘルニアの合併を認め、54%が腺萎縮境界型closed typeであった。またLDA服用者のうちNSAIDsを服用しているもの50%にLA-M以上の逆流性食道炎を認めた。各種循環器用薬、胃粘膜保護剤、胃十二指腸潰瘍病変の有無に関しては関連性を認めなかった。【結論】LDAは逆流性食道炎のリスク因子と考えられ、特に食道裂孔ヘルニアを有する症例、腺萎縮境界型がclosed typeの症例、他のNSAIDs内服の症例でリスクの増加が示唆された。PPI投与はLDA内服による逆流性食道炎の発症を抑制していると考えられた。
索引用語 低用量アスピリン, 逆流性食道炎