セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 肝S11-8:

C型慢性肝炎に対する治療ワクチンの有効性について

演者 木村 公則(がん・感染症センター都立駒込病院・肝臓内科DELIMITER東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
共同演者 小原 道法(東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
抄録 【目的】C型肝炎は国内で約200万人の感染者が存在するが、抗ウイルス薬の開発が進歩し治療効果が飛躍的に向上している。しかし、薬剤耐性株の出現や医療費の増加が予想され、安全で効果的な治療法の開発が急務である。我々はHCV遺伝子組換えワクチニアウイルス(rVV)株を樹立し、治療ワクチンとしての有効性をHCV-Tgを用いて確認したので報告する。【方法】HCV-Tgマウスに構造蛋白質を主に発現するrVV-CN2、非構造蛋白質を発現するrVV-N25、全蛋白質を発現するrVV-CN5およびcontrolとしてLC16m8を接種後1週または4週において1)肝臓内HCV core蛋白量2)血清ALT, cytokine, chemokine 3)脾臓リンパ球での抗原特異的CTLs数 4)肝臓、脾臓、脂肪組織でのmacrophages、monocytesの機能解析5)肝臓のH.E., AZAN,Oil-red-O,F4/80,Ly-6C染色を行った。更にmacrophagesの関与を検討するためにLipo-clodronateをHCV-Tgに投与後1週間で肝組織、肝臓脾臓のリンパ球解析を行った。【成績】rVV接種後4週でN25接種群のみで肝臓HCV蛋白量が減少しており、脾臓内のNS2特異的CTL 数の増加が認められた。またN25接種群では接種後1週で肝臓の索状構造や線維化、steatosisなどの組織学的改善が認められ、血清IFNg, TNFa, IL-6などのcytokineが低下していた。さらに、macrophagesやmonocytesの肝臓内浸潤数が著明に減少し同時にTNF-aやIL-6の産生がcontrol と比較し低下していた。またTNF-aやIL-6Rの中和抗体をHCV-Tgに投与することにより慢性肝炎の組織像が改善し、同様にLipo-clodronate投与後でも肝組織像が改善していた。【結論】N25接種によりHCV蛋白の減少および慢性肝炎の組織像が著明に改善し、これは抗原特異的CTLの誘導のみならず肝臓内へのマクロファージの浸潤が抑制されTNF-aやIL-6の産生が低下したことに起因していると考えられた。これらの知見はN25が抗ウイルス作用だけでなく抗炎症作用も有することを認め慢性肝炎に対する治療薬としての可能性が示唆された。
索引用語 HCV, 治療ワクチン