セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 内S7-9:

抗血栓療法施行患者における小腸粘膜病変―低用量アスピリンの位置付けとカプセル内視鏡所見の特徴―

演者 江崎 幹宏(九州大・病態機能内科)
共同演者 松本 主之(九州大・病態機能内科)
抄録 [目的] 低用量アスピリン(LDA)を含む抗血栓療法施行患者例におけるカプセル内視鏡(CE)所見を検討し、小腸粘膜傷害とLDAの関係を明らかにする。[対象]抗血栓療法中に小腸出血が疑われCEを実施した41例のうち、NSAIDs併用3例と併存疾患に関連した腸病変3例を除く35例を対象とした。[方法](1)対象例における臨床的因子(抗血栓薬:LDA、ワルファリン、他薬剤の有無、基礎疾患:脳梗塞、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心房細動、慢性腎不全、大動脈瘤の有無)と小腸粘膜傷害の関連を検討した。(2)LDA投与例においてCE下に観察された粘膜病変を、発赤、アフタ、びらん、潰瘍、膜様狭窄、ひび割れ様微細病変に分類した。このうち、CEで全小腸が観察可能であった症例ではCE通過時間から小腸を上部・下部小腸に等分し、部位別に病変の有無と病変数を検討した。[結果](1)LDA投与26例中9例(35%)で小腸粘膜傷害が確認されたのに対し、LDA非投与9例では粘膜傷害陽性例はなく、小腸粘膜傷害の頻度は前者で有意に高かった(p=0.04)。他の抗血栓治療薬や酸分泌抑制薬の有無、あるいは基礎疾患別にみた小腸粘膜傷害の頻度に差はなかった。 (2)小腸粘膜傷害陽性9例中8例で全小腸観察が得られ、8例における粘膜病変の総数は10病変以下が4例、10病変以上が4例であった。粘膜病変の内訳は、粘膜発赤8例(上部6例、下部7例)、アフタ7例(上部6例、下部7例)、びらん6例(上部3例、下部6例)、潰瘍3例(上部1例、下部3例)であり、びらん、ないし潰瘍の粗大粘膜病変は下部小腸に多かった。膜様狭窄はなかったが、横走ないし縦走するひび割れ様微細病変を4例(上部2例、下部4例)に認めた。[結論]LDAは抗血栓療法施行例における小腸粘膜傷害の主な要因と考えられる。LDAによる小腸粘膜傷害の主体は軽微な病変であるが、下部小腸では病変が高度となる。
索引用語 カプセル内視鏡, 低用量アスピリン