セッション情報 シンポジウム7(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

低用量アスピリンによる消化管粘膜傷害のup to date

タイトル 消S7-10:

カプセル内視鏡を用いた低用量アスピリン関連小腸粘膜傷害の評価:剤型の違いとカプセル通過時間から傷害発生機序を考える

演者 遠藤 宏樹(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
共同演者 日暮 琢磨(横浜市立大附属病院・内視鏡センター), 中島 淳(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
抄録 【目的】低用量アスピリン(LDA)による消化管傷害の増加が問題となる中、我々はLDAが小腸粘膜傷害を惹起することを報告してきた。傷害発生機序や治療法についてはまだ十分解明・研究されていない。今回LDAによる小腸傷害の機序として直接傷害が関与していることを剤型によるカプセル内視鏡(CE)所見の違いおよび粘膜傷害と小腸通過時間との関連で検討した。【方法】小腸病変精査目的でCEを施行した症例中、LDAを常用していた72症例の粘膜変化を評価した。粘膜所見とその局在を剤型(腸溶剤/緩衝剤)ごとに調べ、さらにCE スコア(Gralnek et al. Aliment Pharmacol Ther 2008)を解析した。CEスコアは小腸粘膜炎症変化を絨毛所見、潰瘍と狭窄を基にスコア化したもので、最終スコアで正常(<135点)、軽症(135~790点)、中等症/重症(≧790点)に分類される。さらに同スコアと小腸通過時間の相関関係を調べた。【成績】潰瘍は有意差を認めないものの腸溶剤群で多い傾向を認めた(35.6% vs 7.7%、P=0.054)。剤型に関わらず潰瘍は下部小腸に多い傾向があり、その傾向は腸溶剤群で緩衝剤群より高かった(25.4% vs 7.7%)。CEスコアは、腸溶剤群で中央値が303(8-4356)で13.6%の症例が中等症/重症に分類されたのに対し、緩衝剤群では中央値が168(112-3978)で7.7%の症例が中等症/重症に分類された(P=0.149)。CEスコアと小腸通過時間の間に有意な正の相関を認め(r=0.419、P=0.0007)、通過時間が4時間以内で中等症/重症に分類された症例は認めなかった。【結論】本研究はLDA常用者の小腸粘膜変化を剤型の違い、通過時間からアプローチした初の研究である。腸溶剤で緩衝剤より粘膜傷害が重度であったことと通過時間が長い症例、つまり薬剤の腸管内曝露時間長いと考えられる症例で傷害が強い傾向を認めたことから、LDAの小腸傷害に直接傷害の関与が大きい可能性が示唆された。今後さらに症例を追加予定である。
索引用語 低用量アスピリン, 小腸