セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患における栄養マネージメント

タイトル 消S8-2:

クローン病の栄養療法の長期予後

演者 福田 能啓(兵庫医大・地域総合医療学)
共同演者 奥田 真珠美(兵庫医大・地域総合医療学), 山本 憲康(兵庫医大・地域総合医療学)
抄録 【背景】5-ASA、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、白血球除去吸着療法、抗体製剤等の治療法が開発されたことにより、活動期のクローン病の寛解期導入が比較的容易になったといえる。しかし、寛解状態を長期にわたって維持することが困難な場合も少なくない。通常の食事摂取により再燃し、増悪することを経験するが、食事脂肪の制限やelimination dietに加えて、成分栄養剤の投与で緩解状態の長期維持が可能となっている。
【目的】成分栄養剤を用いた栄養療法症例の長期予後を検討した。
【方法】1982年より成分栄養剤(エレンタール®)を用いた栄養療法を開始した。これまでに栄養療法を試みたクローン病症例は800例に及ぶが中断症例も少なくない。成分栄養剤を用いた栄養療法が長期に亘って実施できた症例の経過を調査した。
【結果】成分栄養剤と経口食の比率が寛解維持と関連した。成分栄養剤の投与量が理想体重1kgあたり30kcal以上群が最も寛解維持に優れていた。20kcal以上群でも食事内容の指導を十分行えば寛解維持率を改善できた。経管経腸栄養症例の寛解維持は良好であったが、成分栄養剤の経口投与症例では栄養療法の中断が少なくなく再燃率も高かった。クローン病では術後の短腸症候群症例が少なくないので、成分栄養剤投与で下痢が問題となった症例がある。これらの症例に対してはシンバイオティックスや水溶性食物繊維、活性炭投与などで対応することにより栄養療法の継続が可能であった。長期に亘って栄養療法を継続している症例の予後は良好であった。
【結論】成分栄養剤による栄養療法は蛋白抗原除去食であり、elimination dietともいえる。食事指導を併用することにより寛解を長期間維持すること可能である。微量元素欠乏や必須脂肪酸欠乏予防を考慮した栄養指導を行うことが重要である。
索引用語 クローン病, 成分栄養療法