セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 肝S11-9:

肝癌に対する新規アジュバント疎水化ポリγ-グルタミン酸ナノ粒子を用いたペプチドワクチン

演者 巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 明石 満(大阪大・工学部応用化学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】新たな癌治療法として免疫療法であるペプチドワクチンが期待されるが、既存のアジュバントでは活性が弱く、治療効果が限定的である。我々は新規アジュバントとして疎水化ポリγ-グルタミン酸ナノ粒子(γ-PGA)を開発し、これを用いたペプチドワクチンによるトランスレーショナルリサーチを目指している。本研究では、γ-PGAアジュバント活性の特徴とγ-PGAを用いたペプチドワクチンの可能性について報告する。【方法】本学工学研究科においてγ-PGA を開発した。γ-PGAの抗原提示細胞への取り込みと抗原提示細胞の活性化能を評価した。マウス肝腫瘍モデルを用いて、γ-PGAを用いたペプチドワクチンの有用性を検討した。当院薬剤部においてGMP準拠によるγ-PGAペプチドワクチンの製造を検討した。【結果】様々な粒径のγ-PGAが作成可能であり、γ-PGA表面にペプチドを効率よく表面固定することが可能であった。γ-PGAは、マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれ、抗原提示細胞の強い活性化を誘導した。マウスにペプチドワクチンを行うとペプチド特異的CD8陽性CTLが誘導された。肝腫瘍に対してペプチドワクチンの投与を行うと、肝腫瘍を有意に抑制した。この系においてペプチドワクチン投与による肝障害や腎障害は認めなかった。また既存のペプチドワクチンのアジュバントであるISA51に比してγ-PGAペプチドワクチンは、強い抗腫瘍活性を認めた。当院薬剤部においてGMP準拠のγ-PGA製造およびγ-PGAペプチドワクチン製造を確立することができた。またこれを用いた安全性試験の結果、動物の系において重篤な合併症は認めなかった。【結語】GMP準拠したγ-PGAペプチドワクチンの製造方法が確立し、有用性及び安全性が動物の系で示された。今後免疫賦活能の高いγ-PGAペプチドワクチンの臨床試験の実施を行う予定である。
索引用語 ペプチドワクチン, 肝癌