セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患における栄養マネージメント

タイトル 肝S8-8:

肝細胞癌に対する経カテーテル的動脈塞栓術(TACE)施行例における分岐鎖アミノ酸顆粒製剤投与の意義

演者 西川 浩樹(大阪赤十字病院・消化器科)
共同演者 木村 達(大阪赤十字病院・消化器科), 大﨑 往夫(大阪赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】今回我々は肝細胞癌(以下HCC)に対する経カテーテル的動脈塞栓術(以下TACE)施行例におけるBCAA顆粒製剤投与の意義について検討した。【方法】対象は2004年1月から2010年1月までに当科にてHCCに対してTACEを施行され、その後無治療で6カ月以上経過観察可能であった99例である。それらをBCAA顆粒製剤投与群(1群)40例とBCAA顆粒製剤非投与群(2群)59例に分類し、各々の肝予備能をはじめとした臨床検査値を経時的(TACE施行前、施行1週間後、施行1ヶ月後、施行3ヶ月後、施行6ヶ月後)に比較検討し、retrospectiveな解析を行った。【結果】1群は男性27例、女性13例、平均年齢69.9±8.8歳であり、ChildA:B:C=22:15:3、Stage2:3:4A=12:23:5例であった。2群は男性32例、女性27例、平均年齢73.2±10.1歳であり、慢性肝炎例:ChildA:B:C=9:39:10:1、Stage1:2:3:4A=1:11:35:12例であった。臨床検査値では、TACE施行前値との変化量(差)を検討すると、1群の方が2群に比してAlb、PT、Child-Pugh score、ChE値が有意に改善傾向を示した。またサブグループ解析においても、TACE施行時に使用する抗癌剤(ファルモルビシン)の投与量別(40mg以上使用群、40mg未満使用群)の検討で、いずれの群でも1群の方が2群に比してAlb、Child-Pugh scoreが有意に改善傾向を示した。Child別での検討では、特にChildB群においてAlb、Child-Pugh scoreが有意に改善傾向を示した。またAlb値3.5以上の肝硬変群における検討でも、Alb、Child-Pugh scoreが有意に改善傾向を示した。【考察及び結論】HCCに対するTACE施行時、その侵襲のために肝予備能が低下し、再治療時において不十分な治療を施行せざるをえなくなることがしばしば経験される。今回の検討ではBCAA顆粒製剤継続投与により、肝予備能の低下を防ぎ、再治療時の治療選択肢の拡大、ひいては生命予後の延長に寄与する可能性が示唆された。
索引用語 肝細胞癌, BCAA