セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患における栄養マネージメント

タイトル 消S8-11:

障害肝合併肝細胞癌患者の肝切除周術期における運動・栄養療法の臨床効果

演者 海堀 昌樹(関西医大・外科)
共同演者 木村 穣(関西医大・健康科学科), 權 雅憲(関西医大・外科)
抄録 【目的】障害肝合併肝癌患者は蛋白質・エネルギー代謝は肝切除によりさらに低下する。周術期の栄養代謝を維持することは、肝癌患者において予後に影響を及ぼす重要な因子である。これまで肝切除周術期管理において栄養療法に関する報告は多数行われているが、運動療法を導入した報告は皆無である。今回我々は、障害肝合併肝癌に対する手術前後に行う運動・栄養療法を組み合わせた包括的リハビリテーションの臨床効果を検討した。【方法】対象は慢性肝炎、肝硬変併存肝癌患者。運動群(n=36)は術前後運動療法、栄養指導、対照群(n=34)は栄養指導のみ。運動療法は開始前に心肺運動負荷試験(CPX)を行い個人にあった運動プログラムを作成。運動処方は循環器医が作成し、運動プログラムは運動指導士が作成、指導を行う。術前は手術約1M前より開始、術後1週間より再開、自宅でも患者本人により嫌気性代謝閾値(AT)強度での運動療法を術後6M間施行した。【結果】患者70人の年齢70±9歳、男性51人、女性19人。HBV関連13人、HCV関連41人、非BC型関連肝癌16人。両群間において患者背景、手術時因子、病理学的因子において差を認めず。術後入院期間は運動群において短縮。術後6Mでの体組成評価では総重量、脂肪量が運動群において有意に減少を示したが、骨格筋量は差を認めず。運動群は術後6Mの空腹時血清インスリン値、インスリン抵抗性指数においても有意に低値を示した。術後6MでのCPXにおいても運動群は嫌気性代謝閾値酸素摂取量が高値を示した。術後無再発生存率は両群間に有意差を認めなかったが、運動群が良好であった。【考察】障害肝合併肝癌切除術における包括的リハビリテーションにより、1)障害肝に合併したインスリン抵抗性が改善した。2)手術侵襲が過大である肝切除術において術後の体力維持ができ、日常生活への早期回復が可能となった。3)肝硬変患者に特徴的な骨格筋萎縮に対しての予防効果は術後6Mでは認められなかった。今後は運動療法による肝癌術後再発に対する効果を検討予定。
索引用語 肝癌肝切除, 運動療法