セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患における栄養マネージメント

タイトル 消S8-12:

重症急性膵炎における栄養マネージメント

演者 北村 勝哉(昭和大・消化器内科)
共同演者 吉田 仁(昭和大・消化器内科), 井廻 道夫(昭和大・消化器内科)
抄録 【目的】重症急性膵炎(SAP)における経腸栄養は推奨されているが,開始時期や投与期間に関する基準がなく,本邦での普及率は低い.当施設のSAPにおける経管栄養の有用性を検討する.【方法】2002年11月~2010年12月まで当施設で診療したSAP 156例中,経管栄養を施行した73例を対象とした.当施設の経管栄養法は,排ガス,排便や腹痛消失のいずれかを確認後,経管用チューブより経胃または経腸的に栄養剤を1日300 kcal(25 ml/時)程度から投与開始し,1~2日ごとに,1日1,200 kcal(50 ml/時)程度まで増量している.SAP診断後7日以内に経管栄養を開始した42例(早期群)と8日以降に開始した31例(晩期群)における合併症発生率や予後についてretrospectiveに検討した.中央値(最小~最大値)表記.【成績】SAP 73例の年齢は,49(15~83)歳,男性58例,女性15例.成因は,アルコール性35例,胆石性12例,特発性16例,その他10例.厚労省予後因子は,3(0~8)点,CT Grade 1:2:3は,1:55:17,致命率5.5%(4/73).経管栄養開始時期は,7(3~64)病日,投与期間は,5(2~86)日.投与法は,経胃38例,経腸35例.経管栄養剤は,成分栄養剤49例,免疫賦活栄養剤21例,その他3例.早期群と晩期群の患者背景(年齢,性別,成因,予後因子,CT Grade,初期輸液量,動注療法・CHDF施行率,経管栄養施行期間)に有意差を認めなかった.各群での晩期臓器障害合併率(5.1% vs. 31.7%,p=0.001),晩期感染症合併率(5.1% vs. 35.5%,p=0.003),膵感染症合併率(0% vs. 19.4%,p=0.011)は,晩期群と比較し,早期群で有意に低く,晩期MRSA感染症合併率(15.4% vs. 35.5%,p=0.051)は,早期群で低い傾向を示した.両群間で致命率に有意差を認めなかったが,経口摂取開始時期(11病日 vs. 19病日,p<0.001),抗菌薬投与期間(12日 vs. 20日,p<0.001),入院期間(23日 vs. 35日,p<0.001)は,晩期群と比較し,早期群で有意に短縮した.【結論】SAPにおける早期経管栄養は,感染性合併症を低下させ,入院期間の短縮に寄与する可能性が示唆された.
索引用語 重症急性膵炎, 栄養マネージメント