セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-1:

プライマリ・ケアを受診する機能性ディスペプシア患者の臨床的検討-大学病院との比較

演者 野津 司(旭川医大・地域医療教育学)
共同演者 奥村 利勝(旭川医大病院・総合診療部)
抄録 【目的】一次医療機関を受診する機能性ディスペプシア(FD)患者の特徴を明らかにする.【方法】斜里町国保病院を受診した初診患者で,消化器症状を訴えた症例に対して画像診断等の検査を行い,器質的な疾患を除外した.さらにこれらの症例中,RomeII規準によりFDと診断された患者に対して面接により臨床調査を行った.また北海道大学総合診療部で経験したFD患者(30名)と比較検討を行った.【成績】初診患者1416人のうち282人(20%)が消化器症状を訴えていたが,174人(62%)に器質的疾患を認め,残りの108人(38%)は検査で異常を認めず,機能性の消化器症状と考えられた.便通と関連しない心窩部の痛み,不快感を訴える症例は71人で,これらに対して検査結果と,症状の原因が上部消化管の機能異常によって起こりうること,また命に別状がないことを十分に説明し,場合によってはPPIやprokinetics等の投与を行った.このうち59人は3ヶ月以内に症状が消失し,結局RomeII基準に完全に合致したFD患者は残りの12人であった.これら12例は,大学病院のFD症例と比較して,不安の程度,日常生活の障害度は低く,病悩期間も圧倒的に短い症例が多かった.また症状のため,当院を初めて受診した患者が全てであり,これに対して大学病院の症例は,大部分が前医から紹介状を持たずに受診した,いわゆるドクターショッピング症例であった.大学へFD患者を紹介してきた消化器内科医26名に対して,機能性消化管障害の診断に関するアンケートを行ったところ,本疾患に対する認識が低いことが確認された.【結論】プライマリ.ケアを受診するFD患者は軽症が多く,一方,症状が短期間で消失するため,RomeII規準には当てはまらない機能性の消化器症状を訴える患者が多数存在する.これらの症例に対して,医師が疾患認識を高め,適切に対応することで,大学病院で見られる重症のFD患者に進展する症例を減らすことが可能であるかもしれない.
索引用語 機能性ディスペプシア, 疫学