セッション情報 | シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患 |
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タイトル | 消S9-2:プライマリーケアにおける上腹部症状と内視鏡所見 |
演者 | 塩田 星児(大分大附属病院・総合診療部) |
共同演者 | 村上 和成(大分大附属病院・総合診療部), 藤岡 利生(大分大附属病院・総合診療部) |
抄録 | 【目的】プライマリーケアにおいて上腹部症状の患者は多いが、多くは器質的疾患を認めない機能性疾患である。その鑑別には内視鏡検査が有用であるがプライマリーケアでは内視鏡を行うことが容易でない場合もある。よって器質的疾患の除外を症状中心に的確に行うことが求められるが、症状と内視鏡所見は関係しないとする報告もある。今回はプライマリーケアにおける機能性疾患の割合、および器質的疾患と機能的疾患の鑑別について検討を行った。 【方法】2009年10月から2011年2月までに大分大学総合診療部で内視鏡を受けた225名を対象とした。GSRSで上腹部症状を調査し、内視鏡所見との関係について検討した。Hp感染は尿中抗体法で確認した。それぞれの患者はGSRSによって酸逆流群、腹痛群、運動不良群、その他群に分類された。 【成績】有意な内視鏡所見を認めない機能性疾患と考えられるものは全体の75.6%を占め、酸逆流群の75.0%、腹痛群の63.3%、運動不良群の84.6%、その他群の78.5%であった。器質的異常はHp陽性群で有意に陰性群より多く(32.1 vs 16.0%、p=0.01)、Hp陰性群では84%は機能性疾患と考えられた。腹痛群ではその他の群と比較し消化性潰瘍を36.7%と多く認めたが、その77.7%はHp陽性であった。また運動不良群、酸逆流群、その他群の7.1%、9.5%、10.8%に消化性潰瘍を認めたが、それらのうち76.9%はHp陽性であった。腹痛群でもHp陰性であれば消化性潰瘍は少なく、腹痛以外の症状でもHp陽性であれば消化性潰瘍の率が高かった。特に50歳未満のHp陰性群では症状に関係なく消化性潰瘍、胃癌を認めるものはいなかった。胃癌は3名に認められ、1名が消化不良群、2名はその他群で、全員Hp陽性であった。逆流性食道炎はHp感染で差はなかった。 【結論】プライマリーケアを上腹部症状で受診し内視鏡検査を受ける患者の76%は機能性疾患と考えられ、特にHp陰性者ではそのほとんどが機能性疾患である。器質的疾患と機能的疾患の鑑別には症状よりもHp感染診断が有用であると考えられた。 |
索引用語 | 上腹部症状, 内視鏡所見 |