セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-3:

プライマリーケアで診る上腹部症状患者の診断・症状に対する実態調査-新規質問紙を用いて-

演者 富永 和作(大阪市立大・消化器内科)
共同演者 宇野 裕典(大野記念病院), 大谷 健二郎(長吉総合病院)
抄録 機能性ディスペプシア(FD)のRome III基準には、症状頻度、部位、発症ならびに罹病期間などが明記されている。記載されている診断基準(4つの自覚症状と症状頻度)に準拠した新規質問紙票を考案し、上腹部症状患者のFD診断率ならびに自覚症状評価、症状の程度・頻度と腹部領域との関連性について調査した。【方法】大阪11施設の消化器内科で上腹部症状を有した初診患者118名(男:女=51:67, 平均51.5歳)を対象とした。新規質問紙は、症状頻度と腹部領域図、症状程度であり、発症と罹病期間は問診し、内視鏡検査結果を含めた医師の最終診断とを検討した。【成績】症状部位や頻度から、FDの可能性のある群は78例(66.1%)であり、40例は合致しなかった。内視鏡検査結果・問診にて、基準を満たしたFD群は37.1%(29/78)であった。期間を満たさない群は38.5%(30/78)、潰瘍あるいは逆流性食道炎を認めた(UL&RE)群は11.5%(9/78)存在した。自己記入でFDに合致しない群の中で、医師の診断でFDと疑診されていたのは42.5%(17/40)存在した。FD確定診断率は24.6%(29/118)であるが、基準を満たさない非器質性ディスペプシア患者が51.7%存在することも判明した。UL&RE群は13.6%(16/118)であった。これら群別に上腹部症状強度を比較すると、胃の痛みはFD群がUL&RE群に比し強い傾向があり(p=0.090)、FD群ならびに基準を満たさない非器質性ディスペプシア患者は、UL&RE群に比し胃の膨満感が強いことが判明した(p=0.066, p=0.048)。しかし、食後の膨満感や早期飽満感を心窩部に訴えるFD患者より、他の腹部領域にそれら2つの症状を有する患者の方が、症状の程度が強く出現することも判明した。【結論】上腹部症状を有する患者に対する適切なFD診断には補助的な問診ツールが有用であり、FD患者は器質的疾患患者より上腹部症状が強いことが判明した。しかし、症状部位として心窩部以外を指し示す非器質的ディスペプシア患者は、FD患者より症状が強度であることも示された。
索引用語 FD, 質問紙票