セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-4:

ディスペプシアの診断・治療における4段階法(4-step algorithm)の有用性

演者 中島 滋美(社会保険滋賀病院・内科)
共同演者 奥村 嘉章(社会保険滋賀病院・内科), 藤山 佳秀(滋賀医大・消化器内科)
抄録 【目的】演者らは、ディスペプシアの診断・治療のフローチャートとして4段階法(4-step algorithm)を提唱した(Nakajima S: Digestion 2009; 79(suppl 1): 19-25)。今回、そのalgorithmにしたがい、機能性消化管障害(FGID)を診断・治療したので報告する。【方法】何らかの腹部症状があり当院の外来に受診した患者を対象とし、4段階法にしたがって診療を行った。第1段階:器質的疾患を除外するために尿・血液検査、上部消化管内視鏡検査、腹部超音波断層検査、便中ヒトヘモグロビン検査を行った。上部内視鏡検査で生検をおこなった人には定点生検を追加しヘリコバクター・ピロリ(Hp)感染を診断した。生検をしなかった人には、自費でHp感染を診断した。第2段階:Hp感染者には十分な説明と同意取得後自費で除菌療法を行った。第3段階:胸焼けなどの食道症状がある人にはプロトンポンプ阻害薬を投与し、治療反応性を見た。第4段階:腹部症状が残存している人に、ローマIII系統的質問票によりFGIDの診断と分類を行った。【結果】2007年5月からの2年間で第4段階に進んだ患者は112人で、うち94人がFGIDと診断された。これは外来患者1378人中6.8%であった。FGIDのうち53例(56.4%)が複数のFGIDをオーバーラップしており、全部で165のFGIDが診断された。最も多かったのは過敏性腸症候群(IBS)33例(35.1%)、ついで機能性ディスペプシア(FD)29例(30.9%)であった。FDのうち20例(69.0%)が機能性腸障害と、12例(41.4%)がIBSとオーバーラップしていた。【結論】4段階法により腹部症状のある患者をFGIDの診断と分類まで速やかに行うことが可能であった。また、FGIDの過半数はオーバーラップしており、FDの7割が機能性腸障害を合併していることが判明した。4段階法により、診断のみならず治療も速やかに行うことができた。
索引用語 ディスペプシア, 診断