セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-5:

認知症患者の上腹部症状の問診にFスケールは使用可能か?

演者 江口 仁(佐賀大・総合診療部)
共同演者 小泉 俊三(佐賀大・総合診療部), 藤本 一眞(佐賀大・内科)
抄録 【背景】胃食道逆流症(GERD)は様々な要因で発症し修飾される。我々はこれまでGERDの発症に脂肪性肝疾患などの疾患を合併する肥満症や加齢,特に亀背などによる腹圧の上昇が関係していることを報告してきた。過去の報告における高齢者におけるGERDの疫学的検討は,高齢者が医療機関を受診した症例を対象とした検討であることが多いこともあり,不明な点も多い。今回,一般の高齢者におけるGERDの疫学的検討の試行として介護施設を利用する高齢者を対象にFrequency scale for the symptoms of GERD(Fスケール)を実施し,上部消化管症状の有症状率を検討し,更に認知症との関係を検討した。【方法】対象は当院関連施設に設置されるデイケア、デイサービス、ケアハウスを利用する高齢者。主治医意見書を参照し、認知度(認知症高齢者の日常生活自立度判定基準)、介護度、合併症や服薬歴の情報を収集した。GERDの啓発の講習に併せてFスケールによる問診を行った。Fスケールは各自で行わず、スタッフが補助しつつ行った。【結果】対象者数は291例(女性207名、71%)で女性が多かった。平均年齢83.4歳。Body mass indexは平均21.7。IからMまでの認知症がある対象者数は155名(内I21.6%、IIa14.8%、IIb10.3、IIIa5.5%、IIIb0.7%、IV0.3%、M0%)。Fスケールの合計点は、0点は38.5%、1~7点は39.2%、8点以上は20.3%であった。Fスケールは認知症無し群(Fスケール6.21±0.686)と比較し、認知度がIからMの群(Fスケール3.47±0.384)では低値であった(p=0.001)。また、認知症無し vs 認知度I(Fスケール2.86±0.529)でも、有意に低値であった(p=0.001)。【まとめ】高齢者では上部消化器症状は軽度であるが有症状者は多いことが判明した。一方、認知症を有する高齢者は認知症の程度が軽度であってもすでに上部消化管症状の自覚症状が乏しいことが明らかとなった。このことは高齢者では消化器疾患が自覚の遅れにより早期発見が困難であることの傍証のひとつと言える結果となった。
索引用語 胃食道逆流症, 認知症