セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-11:

多チャンネル食道インピーダンス-pH測定とhigh resolution manometryを用いたPPI抵抗性NERDの病態因子の検討

演者 山下 博司(済生会中津病院・消化器内科)
共同演者 豊永 貴彦(済生会中津病院・消化器内科), 蘆田 潔(済生会中津病院・消化器内科)
抄録 【目的】PPI倍量(ラベプラゾール20mg/日)投与にても症状の改善が得られないNERD患者に多チャンネル食道インピーダンス-pH測定(MII)による液体逆流の評価とhigh resolution manometry(HRM)による食道運動機能の評価を行った。【方法】PPI倍量投与にても症状の改善が得られないNERD患者8例(男性5例、平均年齢52.3歳)を対象とした。PPI投与下にMIIを行い液体逆流と症状出現の関連を評価した。またHRMを用いてLES機能(LES静止圧、弛緩残圧)ならびに食道体部を近位側と遠位側に分けて一次蠕動波の評価(蠕動圧、蠕動率)を行った。食道運動機能に関しては健常ボランティア8例(HV)との比較も行った。【結果】総逆流回数は346回でありそのうち酸逆流は122回(35%)、弱酸逆流は219回(63%)、アルカリ逆流は5回(2%)であった。総症状回数は254回でありそのうち逆流関連症状は81回(32%)であった。近位食道への逆流は166回ありそのうち症状出現は66回(40%)認めた。遠位食道に留まる逆流は180回ありそのうち症状を認めたのは15回(8%)であり、近位食道への液体逆流で有意に症状の出現を認めた。また近位食道への逆流は酸逆流が39回(59%)、弱酸逆流が27回(41%)でありpHによる差は認めなかった。近位食道の一次蠕動圧はNERD群34.5mmHg vs HV群47.4mmHg(P<0.05)、蠕動率はNERD群63.8% vs HV群95.2%(P<0.02)でありNERD群で有意に蠕動障害を認めた。遠位食道蠕動機能、LES機能は両群間で差を認めなかった。【結論】PPI抵抗性NERDでは近位食道への液体逆流により症状が出現しやすく、それには近位食道の蠕動運動障害によるクリアランス能の低下が関与しているのではないかと示唆された。
索引用語 PPI抵抗性NERD, 多チャンネル食道インピーダンス-pH測定