セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-12:

食道運動機能検査を用いた機能性胸やけの病態分類とプライマリーケア診療のあり方

演者 舟木 康(愛知医大病院・消化器内科DELIMITER愛知医大・中央臨床検査部)
共同演者 小笠原 尚高(愛知医大病院・消化器内科), 春日井 邦夫(愛知医大病院・消化器内科)
抄録 【目的】RomeIIIでは食道内酸曝露時間正常で、症状逆流関連がなくPPI投与で症状改善のないNERD群を機能性胸やけと定義している。一方、プライマリーケアにおいてはPPI不応性NERDを広義の機能性胸やけとして対応する事が多いと思われるが、その病態は多彩であるため治療に難渋する。そこで、今回われわれは、食道運動機能検査、問診票にて、PPI不応性NERDを逆流関与群と狭義の機能性胸やけ群(逆流非関与群)に分類し背景因子や病態を比較検討した。【方法】PPI不応性NERD患者63名を対象に、食道運動機能検査として食道内圧、24時間食道内インピーダンス・pHモニタリングを施行し病態分類した。症状の評価としてFSSG、QUESTを、QOLと神経症診断のためSF36、GSRSとCMIを施行した。【成績】逆流関与群は35名(男性23名、平均年齢49.3±2.9歳)、機能性胸やけ群は逆流の関与が認められない患者10名と食道運動障害患者18例(男性13名、平均年齢60.7±2.2歳)であった。両群間で性別,BMIに有意差は認めなかったが、機能性胸やけ群の年齢が高かった(p<0.01)。SF-36の平均値は両群でいずれの尺度も50(標準値)を下回ったが両群間に有意差は認めなかった。GSRSでは、両群とも下位尺度が酸逆流以外にも高値を示し他の消化器症状のオーバーラップを認めた。FSSG 、QUESTはともに両群間で有意差を認めなかった。CMIで神経症圏(領域III、IV)と診断されたのは63例中18例で、逆流関与群8例、機能性胸やけ群10例で両群間に有意差は認めなかった。【結論】RomaIII基準による機能性胸やけをプライマリーケア診療で厳密に診断することは困難であるが、診断に固執することなく一定の精神的要因の関与を考慮した総合的な治療アプローチが必要と考えられた。
索引用語 機能性胸やけ, 食道運動機能検査