セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 内S9-13:

GERD症例と非GERD症例における「喉のつまり感」に関連する食道運動機能の差異

演者 眞部 紀明(川崎医大・内視鏡・超音波センター)
共同演者 筒井 英明(川崎医大・消化管内科), 春間 賢(川崎医大・消化管内科)
抄録 【背景】High resolution manometry (HRM)の開発により,食道横紋筋領域と平滑筋領域の境界に相当するtransitional zone (TZ)の測定が可能となった.近年,同領域の協調運動が不良であると,しばしば嚥下物の停滞を引きおこす事が推察されている.「喉のつまり感」は日常診療でよく遭遇する疾患であり,その原因の一つに胃食道逆流症(GERD)が関係している事が報告されている.しかしながら,そのメカニズムについては不明な点が多い.【目的】GERD症例と非GERD症例の「喉のつまり感」に関する食道運動機能の差を検討した.【対象および方法】2007年9月~2011年3月の間に当施設でHRMを施行した234例のうち,「GERD症状」あるいは「喉のつまり感」を主訴とし,器質的疾患を認めない124例を対象とした.測定方法については6時間以上の絶食の後,生食5cc,ゼリー5ccをそれぞれ10回ごと嚥下させ,食道運動機能とbolus transitをHRM(Sandhill Scientific社製INSIGHT G3)を用いて同時に評価した.「喉のつまり感」の程度に関する問診調査は,7-point Likert scaleを用い,HRM検査前に患者自身から回答を得た.【結果】対象は「喉のつまり感」と「GERD症状」の両症状を訴える66例(A群:男性26例,平均年齢54.2才),「GERD症状」のみの症例22例(B群:男性18例,平均年齢51.3才),「喉のつまり感」のみの症例28例(C群:男性14例,平均年齢54.9才)に分類できた.C群とA群間における「喉のつまり感」の程度には差を認めなかったが,C群はA群,B群と比較して,有意にTZの時間が延長し(p<0.01),TZの距離が長く(P<0.01),横紋筋領域と平滑筋領域の収縮運動の協調不良が認められた.一方,A群はB群と比較して,横紋筋領域のcontractile integralが有意に高く(P<0.01),正常蠕動波の出現率が有意に低下していた(p<0.05).【結論】GERD症例における「喉のつまり感」は食道体部の蠕動波の出現率低下に起因しており,非GERD症例のそれはTZの協調運動不良に起因していた.
索引用語 High resolution manometry, transitional zone