セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患に対する先端医療

タイトル 消S11-11:

骨髄由来培養細胞を用いた肝臓修復再生療法の実現化準備―ヒト幹細胞を用いた臨床指針を踏まえてー

演者 寺井 崇二(山口大大学院・消化器病態内科学)
共同演者 高見 太郎(山口大大学院・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大大学院・消化器病態内科学)
抄録 我々は肝硬変症に対する新たな治療法として「自己骨髄細胞投与療法(ABMi療法)」を開発してきた。ただしその開発過程において、2006年9月以降は、“ヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針”を遵守して臨床研究を行うことが厚生労働省より求められている。そこで我々は、HIV合併HCV肝硬変症患者に対するABMi療法や、ABMi療法の質の高いエビデンスをさらに積み重ねるための多施設無作為試験(HCVを起因とする肝硬変症患者に対するABMi療法)に対する“ヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針”の承認をすでに取得し、スクリーニングを含めて推進している(現時点では、肝疾患領域の幹細胞審査採択課題はこの2課題のみ)。一方で、従来のABMi療法が実施できない肝硬変症患者に対する適応拡大を目指して、ヒト骨髄由来培養細胞を用いた肝臓再生修復療法の基礎研究を進めている。基礎研究成果を先端医療として実現させるためには、基礎研究段階から安全性評価を含めた”ヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針”の承認を目指した研究を推進することが必要である。そのため我々は、市販の培養ヒト骨髄細胞のNOD-SCID 四塩化炭素障害肝硬変症モデルに対する有効性だけでなく、その培養細胞の安全性も評価してきた。その結果、培養ヒト骨髄間葉系細胞(CD73/CD90/CD105陽性かつCD11b/CD45陰性分画)が肝線維化改善に有用であることを確認し、実際の治療では30ml骨髄液から約1.5x107個の間葉系細胞を確保すること(=15cm培養皿で15枚)を想定している。さらに大型動物であるイヌモデル系で、自己骨髄細胞を培養し経静脈的に投与する安全性試験を実施するとともに、GMPグレードの再生細胞療法センターにてSOP(標準作業手順書)の整備を行っている。これらの具体的な準備は、今後、消化器領域において先端医療を実現化するためには重要であり、現在進行中の結果を含めて報告する。
索引用語 ABMi療法, 肝再生医療