セッション情報 シンポジウム9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

プライマリーケアにおける機能性食道・胃疾患

タイトル 消S9-16:

上腹部症状に対するプロトンポンプ阻害薬の効果についての検討

演者 藤村 宜憲(心臓病センター榊原病院・消化器内科)
共同演者 後藤 研介(ごとうクリニック), 鎌田 智有(川崎医大・消化管内科)
抄録 【背景と目的】機能性胃腸症 (functional dyspepsia: FD)はプライマリーケア領域においてよく経験する疾患であり,その治療には酸分泌抑制薬,消化管運動改善薬および抗不安薬などが使用されている。プライマリーケアにおけるFD に対するPPIの有効性とその用量について検討した。【対象】3カ月以内の慢性的な上腹部症状があり,過去3ヵ月以内に内視鏡未実施の患者で研究登録時にGlobal Overall Severityスコア4以上の症状を1つ以上有している患者を対象とした。なお,尿中抗体法によりH. pylori 陰性と判定された患者とし,上腹部症状の種類は心窩部痛,胸やけ,胃酸の逆流感,胃もたれ,吐き気,げっぷ,早期満腹感,膨満感のいずれかとした。上記の基準を満たした195例 (男性72例,女性123例,年齢18~88歳,平均年齢44.0歳)を対象とした。切除胃,除菌施行例,NSAIDs内服例およびその他不適格例は除外した。【方法】対象をオメプラゾール20mg連続投与群 (OPZ 20),オメプラゾール10mg連続投与群 (OPZ 10),オメプラゾール20mgオンデマンド投与群 (On-demand)の3群に無作為に割り付け,4週間投与後にGOSスコアを用いて症状の改善率を評価した。試験期間中,他の酸分泌抑制薬,防御因子増強薬,制酸剤等の投与は禁止した。【成績】対象はOPZ 20群61例,OPZ 10群72例,On-demand群62例の3群に割り付けられた。投与4週後の改善率は,OPZ 20群65.6% (40/61),OPZ 10群47.2% (34/72),On-demand群50.0% (31/62)であり,OPZ 20群はOPZ 10群に比して上腹部症状の改善率が有意に高率であった (p= 0.034)。OPZ 10群とOn-demand群ではほぼ同等の改善効果であった。症状別に解析した結果,逆流感,胃もたれ,吐き気,膨満感においてOPZ 20群はOPZ 10群に比して有意な改善効果が認められた。【結論】内視鏡検査を直ちに実施できないプライマリーケア医療において,OPZ 20mgによる治療はH. pylori 陰性のFDに対して逆流感,胃もたれ,吐き気,膨満感の症状を有意に改善させた。
索引用語 機能性胃腸症, プロトンポンプ阻害薬