セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の新たな展開

タイトル 肝S10-3:

これまでの標準治療の治療効果と発癌リスクの検証に基づくC型肝炎の新規治療戦略

演者 朝比奈 靖浩(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】特異的HCV増殖阻害剤の導入により治療効果が向上し予後の改善が期待されるが、わが国には線維化進展例が多いなどの問題も多い。これまでの標準治療における治療効果寄与因子と発癌リスクを検証し新時代の治療戦略を検討する。【方法】[1] PEG-IFN/RBV施行943例(平均58歳、M/F=566/377、1b/others=772/171)を対象とし、多変量解析にて治療効果寄与因子を検討した。 [2] 肝生検を施行したIFN治療例2,589例のうちIL28B SNPが判明した1,088例のコホート(平均58歳、M/F=427/661、平均5.9年観察)を対象とし、累積発癌率と発癌リスク因子を解析した(Cox比例ハザード)。【成績】[1] IL28B major は73%で、genotype 1の48週治療のSVR率は54%であったが、minorではNVRが54%であった。SVRには、性別、F因子、LDL-C、HCV量、ISDR、IL28B SNPが独立して関与し、NVRにはIL28B SNPの他は性別が関与していた。再燃には血小板数とISDRが関与し、IL28Bは独立因子ではなかった。[2]コホート全体の15年累積発癌率は11.6%で、IL28B minorでは15.4%とmajorの10.1%に比し有意に高率で (p=0.01, log-rank test)、非SVR例に限っても同様であった。一方、SVR例のIL28B minorからの発癌はなかった。多変量解析で非SVR例における発癌リスク因子を検討すると、IL28B minor allele、高齢、男性、高度線維化が寄与していた。一方、IL28B minor症例を多く含む非SVR例でも、IFN治療後のALT<20IU/mlまたはAFP<5ng/mlに低下した例では発癌リスクがSVR例と同等であった。【結論】これまでの標準治療ではSVRが得にくいIL28B minor症例や線維化進展例では、発癌リスクが高い。特に、IL28B minor症例は新規治療においてSVRが得られ発癌抑制が期待されるが、非SVR例であっても治療によりALT値またはAFP値の持続的な低下が得られれば発癌リスクの低下が期待できる。従って、新規治療が導入されてもSVRが得られない症例では、ALTやAFPの低下をめざした治療介入が必要と考えられる。
索引用語 IL28B, 発癌