セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の新たな展開

タイトル 肝S10-4:

宿主およびウイルス因子からみた1b高ウイルス量C型慢性肝炎に対する治療方針

演者 今村 道雄(広島大大学院・分子病態制御内科学)
共同演者 越智 秀典(理化学研究所・横浜研究所・ゲノム医科学研究センター消化器疾患チーム), 茶山 一彰(広島大大学院・分子病態制御内科学)
抄録 【目的】宿主およびウイルス因子からみたPEG-IFN/RBV併用療法の成績をもとに,1b高ウイルス量C型慢性肝炎に対する今後の治療方針をたてる.
【方法】対象は,2004年から現在に至るまで当科および関連施設(広島肝臓Study Group)においてPEG-IFN/RBV併用療法を施行した1b高ウイルス量のC型慢性肝炎患者1440例.IL28B(rs8099917)多型およびCore70変異の有無による治療成績,ITPA(rs1127354)多型による貧血の出現頻度,Peg-IFN/RBV/Telaprevir併用療法の成績,動物モデルを用いたDAA多剤併用療法の結果をもとに,今後の治療方針を検討した.
【成績】1b型高ウイルス量に対するPEG-IFN/RBV併用療法のSVR率は44%(626/1440)であった.SVR率は,IL28B TTではCore70野生型58%(119/205),変異型42%(33/78),IL28B TG/GGではCore70野生型31%(17/54),変異型21%(13/62)と層別化された.ITPA(938例で解析)CCは,CA/AAに比べHbが有意に低下し,このためRBVの減量および中止が多かった.PEG-IFN/RBV/Telaprevir併用療法のSVR率は,81%(13/16)と高かった.一方,16例中5例(31%)で,貧血のためRBVあるいはTelaprevirの中止が必要であり,うち4例は高齢女性であった.HCV感染ヒト肝細胞キメラマウスを用いた検討では,プロテアーゼおよびポリメラーゼ阻害剤の併用療法(telaprevir/MK-0608,田辺三菱製薬より供与)は,マウス血中HCVを速やかに低下させ,4週間の投与によりHCVを排除した.
【結論】1b高ウイルス量に対しては,IL28B多型およびCore70をもとに,PEG-IFN/RBVあるいはPEG-IFN/RBV/Telaprevir併用療法を検討する.ただしIL28B TG/GGかつCore70変異型の症例ではPeg-IFN/RBV/Telaprevir併用療法でもSVRが得られ難いと報告されている.これらの症例あるいは高齢女性やITPAの多型から治療に対する認容性が低い症例に対しては,これらと無関係に有効であるDAA多剤併用療法が期待される.
索引用語 C型慢性肝炎, IL28B