セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の新たな展開

タイトル 肝S10-5:

難治性C型肝炎に対する新薬を踏まえたPeg-IFN/Ribavirin併用療法の適応と限界

演者 平松 直樹(大阪大・消化器内科)
共同演者 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科), 林 紀夫(関西労災病院)
抄録 新たな治療薬であるProtease阻害剤/Telaprevirでは、Peg-IFN/RBVとの併用により、genotype1型C型肝炎の約7割で著効が得られるが、貧血や皮疹などの副作用が増強される可能性があり、治療への忍容性が低い症例の適応が難しい。特に、発癌リスクの高い高齢者では、より早期のHCV排除が望ましいが、Peg-IFN/RBV療法による著効率は約3割であるため、治療早期から効果予測を行いながら治療の継続/中止を決定する個別化治療が必要である。今回、C型肝炎に対するPeg-IFN/RBV併用療法治療例の発癌状況からみた同療法の適応と限界について検討した。対象は、OLF参加施設において同療法を施行したC型肝炎2098例(年齢:56.3±10.7歳、M/F=1032/1056例、F0-2/F3-4=1236/247例、観察期間: 40.0 ± 12.7 ヵ月)である。肝発癌についての多変量解析では、65歳以上群では55歳未満に比し発癌率が高く(HR 9.4, p<0.001)、また、男性(HR 2.5, p=0.002)、線維化進展例(F3-4) (HR 1.9, p=0.03)で発癌が高率であり、これらは、無効群に比し、再燃群(HR 0.36, p=0.01)、著効群(HR 0.34, p=0.001)で有意に抑制された。一方、IL28B SNP(rs8099917)を判定しえた545例における著効に対する多変量解析(変量:性別/年齢/IL28B SNP/HCV-RNA量/血球数/肝酵素/治療4週時HCV-RNA減少率)では、4週時HCV-RNA減少率のみが有意な因子であり(OR 3.5, p<0.001)、無効に対する検討では、4週時HCV-RNA減少率(OR 0.09, p<0.001)、Hb(OR 0.40, p=0.002)、γGTP(OR 1.01, p<0.001)が独立因子として選択されたが、IL28B SNPは有意ではなかった。治療開始4週時減少率と無効率には、1log未満/1-2log/2-3log/4log以上: 92/60/16/12/7%と強い相関があった。以上より、現時点で発癌リスクの高いC型肝炎症例では、治療早期の抗ウイルス効果を考慮に入れた積極的なPeg-IFN/RBV併用療法の導入が必要であり、逆に、発癌リスクが低く、IL28B(minor allele)など低著効率が予測される症例では、新薬への待機を考慮する必要があると考えられた。
索引用語 C型肝炎, Peg-IFN/RBV併用療法